1964年9月、昭森社から刊行された堀内幸枝(1920~)の第4詩集。装画は堀文子。著者は山梨県御坂峠生まれ、刊行時の著者の住所は新宿区柏木。
詩書を開くと、すぐ目につく「プロセス・メタフォア・デフォルメ」など、など、それ等知的分析を拒み、それ等の方法論からのがれて、たえず不可解な剰余を残して私の中にくすぶりつづけているもの――私はこれをわが私小說的感情などと呼び、また一方優秀な詩論の前にたえず戸惑い、一種の恥辱感をもつて身を隠そうとする、きわめて主情的なこの剰余の感情に対して、私は生きた廃墟と呼んでみるが、あたかも不治の病をかかえた患者のように、自分自身の中にひそむ、詩の網にもとらえがたい部分を、無視し、忘れ去ろうとしてみても、生きた廃墟はいつかめざめて、その血の濃さを私に思い知らそうとする。
この限定しようとする意志と、限定されざるものとの相剋、常に分析的表現から逃げまどつて2+2が6になつたり8になる、どこかこつけいなしかし旺盛なこの感情のために、私は一冊の詩集をあんでみました。
目次
・花と風景
- あなたとわたし
- サルビア
- 夕焼が私の上に落ちてこようと
- 曇天
- また次の恋人に
- 再び赤いカンナをうたう
- くさる
- 白壁とカンナ
- 或る風景
- 花が一つ咲いている
- ひなの日は
- 病中夢想
・午後の窓
- 森の中
- 死んだ窓
- 光線
- ひびき
- 困憊
- 煙の馬
- 地上
- 動く木
- 黙って 黙って
- ふるさとの駅
- 丘で
- 雨の日の小景
・影、影
- 月と変身
- 鏡の奥のもの
- えたいの知れぬ風景
- 影と入れかわった女
- 真夏の夜の谷間
あとがき