武蔵野 鍵和田秞子句集

 2000年7月、角川書店から刊行された鍵和田秞子(1932~2020)の第4句集。装幀は伊藤鑛治。著者は神奈川県生まれ、刊行時の住所は東京都府中市栄町。

 

 句集『未来図』『浮標』『飛鳥』に続く第四句集を『武蔵野』と名付けた。現在、私が住んでいる土地である。三十歳の頃、海辺の湘南から、家の都合でこの武蔵野に越して来た。ほんのしばらくの間と思っていたのに、流寓も既に二十余年となり、終の住処となりそうである。
 家の近くに武蔵国分寺址があり、殿ヶ谷戸庭園などもあって、まだ武蔵野の雑木林の面影を残している。少女時代に国木田独歩の『武蔵野』を読んで思い描いた落葉樹林ほどではないけれども、大欅や竹林など、折々に心を慰めてくれる。
 この句集に収録した昭和六十一年から平成二年初めまでの四年余の期間は、俳誌「未来図」のほぼ三年目から六年目までの間に当り、この間、短大の講師も辞して、主宰として全く俳句だけにかかわって過して来た。それなりに多忙であったが、今ふり返ってみると、多くの協力を得て、着実に平穏に過ぎたとの思いもある。折々の小旅行以外は武蔵野での所産なので、私のつねの日のつねの思いが芯になっていようか。
 ともあれ、私の五十代半ばの作品、四百十二句をまとめ、今後の新しい出発に備えたいと思う。
(「あとがき」より)

 

目次

  • 寒鯉 昭和六十一年
  • 真葛原 昭和六十二年
  • 鶴声 昭和六十三年
  • 揚花火 平成元年
  • 初氷 平成二年

あとがき


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