詩人の夏 西脇順三郎と伊東静雄 城戸朱理

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1994年、矢立出版から菊地信義装丁シリーズの7冊目として発行された城戸朱理の講演録。1993年6月、立川市幸公民館の企画で行われた連続講演会の「夏」の部。「春」は秋山駿による「中原中也」、「秋」は正津勉による「秋のアンソロジー」、冬は川村湊による「北方の詩人たち」。本書はまた、西脇順三郎生誕百年記念として刊行された。吉増剛造の序詩あり。

 

 ……城戸は西脇順三郎伊東静雄という遠い二人の詩人を夏というキーワードで結ぶ講演を一冊にした。限られた時間の中で、二人の詩人に対して城戸の紹介は外壁からじわじわと内側に話をしぼって喋って行く、という並々ならぬ話術がくりひろげられちる、まさに城戸朱理の才智の大きさと緻密さであろう。
 伊東静雄を語るのに二人の人物を登場させている。一人はイタリアの十九世紀の最大のペシミストの詩人、ジャコミ・レオパルディ、もう独りはドイツの指揮者オットー・クレンペラーである。これらの二人の人物のエピソードを挙げつつ、伊東の詩の核の強さ、冷たい抒情を語っている個所があるが、聞く者に強い心象を与えたことは必至だったろう。
 また西脇順三郎については、有名な「天気」、「太陽」の例をイントロダクションにして、夏の話へと展開して行く。大体、西脇という人は一年のうちで夏の終りが一番好きだ、とよく口にしていたことを思い浮べる。いわゆる残暑のきびしい頃だ。そしてその頃散歩をすることをこの上なく愛していた……


(栞:藤富保男 二人の詩人を浮き彫りにする――城戸朱理の講演 より)

 

 

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