2006年7月、思潮社から刊行された倉橋健一(1934~)の第8詩集。装画は小池一馬"lost parts"。2006年度地球賞受賞作品。
世界のあちこちは血腥(ちなまぐさ)いが私たちの周りも負けず劣らず血腥い。学校も学校の運動場も通学路も危険地帯になり、送り迎えをしてくれるやさしいおばさんやときにはかけがえのない母親までが、突如、殺人鬼になる世の中になってしまった。
私は内心、ヨハネ黙示録の七人の天使の吹きならすラッパの音を聞いているが、といって、自分の魔に怯える私は、そこから身をそらすこともできない。
そんなわけで、『異刻抄』に続く五年間、私は三面記事から詩を書きたいと思ってきた。伊東静雄がジョヴァンニ・セガッティーニの油彩画『帰郷』を眺めながら、『曠野の歌』を書いたように。編んでみたら、こんなかたちになり、そこで「化身」と名づけることにした。
現在の世界のさまざまな低みへ、私なりに立ってみたかったという程度が、正直なところだろう。(「あとがき」より)
目次
化身
- 草原にて
- 転落
- 不眠
- 明かりが灯る頃
- オウエルをヒントにして
- テロの実行為者(テロリスト)にいたる六つの断章
- ふあんふあん
- 最後の晩餐
- 今日もどこかで
- 灯台鳥
- 倒れゆく赤ちゃん
- 悲劇
- 八つのレリーフによる子どものいる黙示劇
- ひとり孤独
- 六月の夢魔
・斑っ子
- 黙示(モノローグ)
- 開演前
- 斑(まだら)っ子
- 七つのレリーフにによる苺色にはじまる連想
- たわいない話
- 魅入られて
- 溜まり色
- ホームレス ホームレス
- 片隅(へんぐう)
- 北の海にて
- 不思議な明治
- 十一歳のbirthday
- 秋霖が去って
あとがき