1981年10月、VAN書房から刊行された菊池正(1916~)の第16詩集。VANシリーズ75。著者は岩手県生まれ、刊行時の住所は横浜市港北区仲手原。
「忍冬」といってもすいかずらのことではない。
人生にも四季があるのだとすれば、わたしはまさしくその冬に当たっているといえるだろう。そしてわたしの生涯は、いつも寥寥と冬の風景を歩いてきたようなものだ。それらの思いにしのびたえるほどの意である。
詩を書き続けて四十年に余るが、結局わずかにこれくらいのものを残すばかりのことであった。そういう感懐にもまたたえる気持を託そうとするのであろうか。私は光の遊ぶ舗装道路に、ぺったりと
腰を落ち着けて
阿呆の歌を歌いたかったこれは、若くして自ら命を絶ったある少女が遺した詩句である。わたしが一生かけて歌おうとしたのも、今は同断であったと信じられる。
(「あとがき」より)
目次
- 街角
- 時雨考
- 老眼
- 晚年
- 何もない庭
- 樹木
- 冬のSonnet
- 短日
- 残照遠望
- 花火
- 生涯
- 屋根
- 冬枝
- 顔
あとがき