1987年8月、書肆季節社から刊行された木津豊太郎(1921~1986)の遺稿詩集。編集は鈴木漠。
ここに『背中の美学』と題して編まれた詩集は、木津豊太郎氏の、生前に刊行された二冊の詩集『腕のない花束』(一九五五年国文社)『普通の鶏』(一九八三年書肆季節社)の、恰も中間に位置するものである。収められた詩篇のおよそは一九五〇年代半ばに書かれ、主として北園克衛主宰誌「VOU」に初出の見えるもののほか「サンドル」「尖塔」「机」「青ガラス」「詩学」等の詩誌に発表されている。発表の年次によっては、多少仮名遣いがまちまちであったものを、晩年の木津さんの手法に沿って新仮名遣いに統一したことと、すでに『普通の鶏』に収録されていて重複する数篇を割愛したほかは、木津さんご自身の手で編まれたそのままの配列となっている。また、[跋文]は、この詩集のために木津さんが書き下されたものである。
木津さんが永眠されたのは、一九八六年八月六日であったが、さまざまの事情のために刊行が遅れた『背中の美学』を、ようやくながら一周忌の墓前に献ずることができるのは、私にとっても望外のよろこびである。
木津さんとの約束を果たすために情熱を傾けてやまなかった政田岑生氏、原版づくりのワードプロセッサ操作にご尽力くださった後藤よね子氏に、心からの感謝と敬意を捧げる次第である。
(「付記/鈴木漢」より)
目次
Ⅰ 背中の美学
- ☆☆☆(傾いて)
- ☆☆☆(僅かにコップの均衡を破ると)
- あるいは春
- 赤はベレ
- デッサン
- デッサン
- デッサン
- ぼくの右手には愛がない
- サアカス――口上
- サアカス
- サアカス
- サアカス
- 一日
- 友に
- ばかなオウムもいて
- 純粋
- ロマンティック・リアリティ
- ロマンティック・リアリティ
- 椅子は果実を夢みていた
- 指は剽悍だった
- ☆☆☆(沼のような遊園地に)
- ☆☆☆(すべての英雄と偶像を粉砕せよ)
- ☆☆☆(ヴィザのないあなた)
- ☆☆☆(もはやそれは)
- 少年
- 川
- 十七歳の日記
- 魔を主題とする思考
- 海の絵
- 手風琴のある肖像
- ついに沛然たる豪雨がやって来た
- 貧しい食事
Ⅱ 頭ならびに足
- 壁あるいは誰のために
- 室内a
- 室内b
- 室内c
- ★★★
- オブジェ
- 風景
- すべて
- 蝸牛色の出会に関する若干のノオト
- 帽子のなかの海 壁のなかのテイブル
- ドラム と 見える
- 方法 と 曲り角
- カルマン夫人の赤い風船
- 人ハユルサレタ時全部野犬デアル
- 何モクレナイ神
- ぼくはひそかに北園克衛に精神的支柱を感じていた
編集付記