2002年2月、不識書院から刊行された畑中良輔(1922~2012)の第1詩集。著者は福岡県門司市生まれ。音楽家。
私の最初の詩集である。
幼い頃から詩人か小説家になりたくて、学業はそっちのけ。文学書を読み耽っていたが、いつの間にか音楽家になってしまった。それでも何とか詩みたいなものは時々書いていて、今それらを読んでみると、まさに噴飯ものであるが、その中から何とか少しひろい出してみた。
ここには昭和十二年、中学三年の頃からのものから始まっている。この頃はシュールレアリスムに凝っていた頃で、特に私は春山行夫の尖鋭な詩論に傾倒し、作品としては北園克衛、西脇順三郎に熱中した。滝口修造の著作も熟読した。当時、季刊で《詩と詩論》が最前衛の詩論を展開しており、これらの叢書は今なお新鮮で刺激的である。この中学三年の時から前衛自由律短歌(当時は”新短歌”といった)の「短歌と方法」(逗子八郎主宰)の同人に加わり言語感覚を磨いた。木原孝一同人に加わっていた。
この頃、全国の文芸同好の中学生たちで作っていた同人誌「星眸」が創刊され、以来毎号作品を寄せた。この詩集の最後の「油絵とデッサン」は中央の文芸誌「若草」の全国同人誌評の中で、「アポリネールふうの雰囲気を狙ったものだが、地方の中学生の作品としては~垢ぬけしたもの、といえる」との評がのせられた。
この詩集の「超える影に」は三善晃、「四季の歌」は中田喜直、Ⅱの四篇は大中恩の諸氏により作曲された。
この一冊を編むについて、詩友相澤啓三氏、また出版に当って不識書院の中靜勇氏の御世話になった。この欄を借りて御礼を申し上げたい。今後、少し時間が出来るようになったら、また次の一冊を編みたいと思っているのだが……。なお、作品によっては旧仮名を新仮名に書き直したものもある。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 超える影に
- 水
- 光
- 海
- 山
- 四季の歌
- 春の歌
- 夏の歌
- 秋の歌
- 冬の歌
- 牧歌
- 春の墓
- 麦笛
- 風
- 哀傷
- 天の罠
- 夏
Ⅱ
- 地球ってヘンですね
- サッちゃんの家
- 乗物
- 散歩
Ⅲ
- Elegy
- 抒情歌
- ふるさと
- 青い旅行
- はながたみⅠ
- はながたみⅡ
- 路
- きしゃにちゅういせよ
- REQUIEM
Ⅳ
- えちゅうど
Ⅴ
- ごけさんぶね
- 油絵とデッサン
創作年と初出及び出演者
あとがき