2018年8月、思潮社から刊行された松川紀代(1948~)の第6詩集。著者は大阪生まれ、刊行時の著者の住所は西宮市。
三年ほど前に兵庫県西宮市に引っ越した。それまでの十七年間奈良の生駒市に住んでいた。家から見えた生駒山は兵庫県にある六甲山地より低くなだらかだ。だから毎日山の上の空のようすまで見えた。
山の近くに住んで学ぶことは多く、季節ごとに変わってゆく山の色合いには言葉では言い尽くせない美しさがある。
山を見ながら時を忘れて、自分の中にある別の風景の移ろいを見ていたのかもしれない。
なぜかほっとするが、奇妙な体験だったと今は思う。
退職し、少しゆっくりする時間を持てて二冊の詩集をまとめた。この六冊目となる『夢の端っこ』の大半も、生駒の家で書いた。
西宮には、喫茶店がたくさんあって嬉しい。生駒の歩道には人がほとんど歩いていない。生来の都会っ子である私は、毎日のようにバスに乗って生駒駅の近鉄デパートまで行き、お茶を飲んだ。こんなことも思い出になった。
私のような怠け者が詩を書き続けてこられたのはひとえに、詩人の中江俊夫氏との出会いがあったからだ。心から感謝し、深くお礼を申し上げます。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 万物流転
Ⅱ
- ストライプ
- 手袋
- ゲーム
- 買物
- 市電
- 電話
- ケケル島
- 熊の国
- 生きる力
- あっぽう
- あひる
- 越智ちゃん
- 金森さん
- 声
- 先祖
- マグロ
- 青い狐
- 遠い星からの視線
- ひかり
あとがき