1962年11月、文童社から刊行された荒木二三(文雄)の詩集。編集はラビーン詩社、装幀は天野隆一。
「オフェリア頌」以後かいたものの中で、比較的ましだと思うものを集めた。まずいのが気にかかる。詩は言葉の芸術だと思うので、まずいのは致命的だ。だが自分のまずさに気がつくことはそれだけ進歩の可能性もあるのだと思って、みずから慰めている。
内容については、私は、自分の生きている足下が常に頼りなく感じられ、意識無意識の中に、何か確実なものを求めているのを感じる。そのような頼りない気持を最もよくあらわすものとして、集中夢のことをかいた本から「夢の記録」をそのまま借りてきた。(勿論少しでも字句を変え、行を切って詩形にし以上は、詩作品としての責任は私にある。)自分の命をたしかめようとすると、ふがいなくもこういう所に突き出されるので、今のところ私の現実の核心はまるでこの夢のようだといわざるをえない。
それで、私はやむをえずこの現実を見まもつて、その周辺をうろつくようなことになっている。将来この現実――夢からさめられるとよいのだが、そんな夢、現実を望むのは少し荷がかち過るようだ。
(「後記」より)
目次
- 砂漠で
- 薔薇と壁
- 雪に埋れて
- 水
- 古里
- 少年
- 路線で
- こけし
- 手
- 渦
- 三つの花
- 苔の寺
- 夜の中で
- 真珠のくさり
- 幸福
- 紫陽花
- たそがれ
- 紅がら
- メーデー
- 闇
- 織りめ
- ある夢の記録
- 愛と量
- 村と島
- 大かぶら
- 能
- インクの月
後記