1993年5月、思潮社から刊行された北川透(1935~)の第22評論集。
本書は「思いつき詩的表現論」というタイトルで「現代詩手帖」一九八七年十一月号から、一九八九年五月まで、十二回にわたって書いた連載評論を、全面的に加筆・修正して成立したものである。従って、はじめから『詩的レトリック入門』というタイトルの書物が構想されたわけではないし、できるだけわかりやすく乱雑に〈思いつき風に〉書こうとしたが、いわうる現代詩についての啓蒙書が目ざされたわけではなかった。(「あとがき」より)
目次
Ⅰレトリックの誘惑
- 1〈思いつき〉からはじめて
- 2詩的レトリックは修辞ではない
- 3違犯の関係が価値にかかわる
Ⅱ余白論の試み
- 1余白の出現、ざしきぼつこのような
- 2構成された余白、文語定型詩
- 3幻肢としての余白、俳句・短歌
- 4〈発生〉の余白――再び、短歌
- 5恣意的な余白――口語自由詩
Ⅲ詩と散文のあいだで
- 1「かやの実」の不思議
- 2詩と散文の間
- 3言語革命の試み、瀧口修造まで
Ⅳ詩作品の〈語り手〉とは――詩・短歌・俳句における〈私〉
- 1仮構された〈語り手〉
- 2俳句の〈語り手〉
- 3短歌の〈語り手〉
- 4現代詩の〈語り手〉
Ⅴ詩的意味論の試み
- 1意味のずれ
- 2意味に違犯する関係
- 3シンタックスの揺らぎ
- 4意味の虐殺
- 5《心の声》あるいは〈てにをは〉
- 6ナンセンスの出現
Ⅵ未知の像――詩的比喩論の試み
- 1一般的比喩について
- 2詩的比喩について
- 3「荒地」派の比喩論
- 4詩的隠喩について その1戦後詩の基底
- 5詩的隠喩について その2戦後詩の飽和
- 6肯定性としての喩
- 7全体的な比喩
Ⅶ反喩の構造――詩的仮構論の試み
- 1言語の階層化
- 2コノテーションの構造
- 3多方向通路
Ⅷ詩的境界について
- 1境界の概念
- 2擬物語的・擬論理的叙述の試み
- 3物語に戯れ、物語を裏切る、もの騙り
Ⅸ詩型論の試み
- 1詩歌のリズム――音数律
- 2幻の音韻律とソネット
- 3非定型の詩のフォルム
あとがき
索引