1980年12月、思潮社から刊行された吉野弘(1926~2014)の評論集。挿画はながたはるみ。
三十三篇の文章を小著に収めました。この中では一九五九年に書いた一篇(「詩とプロパガンダ」)が最も古く、以下、六〇年代が八篇、七〇年代が二十四篇となっています。柄にもなく、詩人論が多いのは、頭の仕組みが評論向きには出来ていないにも拘わらず恐れげもなく書いた結果です。
五〇年代・六〇年代に書いたものは、内容についての記憶も覚束なくて、こんなことを自分が書いたのかと思う有様でした。気恥ずかしい文章ばかりの中で、特に「高見順の詩」についての一文は過剰鑑賞の観があり、読みづらいのではないかと思います。これは、「現代詩鑑賞講座」のために書いたもので、丁寧な鑑賞を眼目にしたため自ずとそうなったようです。
(「あとがき」より)
目次
I
- 詩とプロパガンダ
- 死について
- 詩と言葉の通路
- 1詩の感触
- 2意味の揺れ
- 3意味の揺れ・再説
- 4喩としての言葉
Ⅱ
- 自作について
- 「初めての児に」
- 「I was born」
- 「夕焼け」
- 「生命は」
- 「ステンレスという名のあなたに」
- 処女詩集『消息』の思い出
Ⅲ
- 石川啄木「歌のいろいろ」寸感
- 高村光太郎・極端志向
- 中原中也「帰郷」について
- 立原道造・意図的な表現の不安定
- 高見順の詩
- 村野四郎詩集『天の繭』のことなど
- 金子さんのこと
- 草野さんのこと
- 黒田三郎論
- 1作品論の試み
- 2黒田さんに於ける「私」
- 3詩集『ひとりの女に』小論
- 4黒田さんの詩的背景
- 鮎川信夫さんのこと
- 1対談感想記
- 2或る資質
- 関根弘をダシに使ってのひとくさり
- 清岡さんの「羞恥」について
- 高野喜久雄小論
- 石垣りんの詩と散文を読む
- 岩田宏『最前線』讃
- 富岡多恵子小論
- 三木卓素描
あとがき