1979年8月、光風社出版から刊行された吉田静代の随筆集。装幀は難波淳郎。
明治人の一面 和田芳恵
この本の著者は、いまから六十年あまり前に女性編集者だった。婦人記者や女性編集者が、珍らしかったころのことである。明治の終り近い女学校の人情生態や、大正文壇の一角が舞台裏から描かれているのも、私などにはありがたい。この一冊を読み了えての私の感想は、明治から大正へかけての下町の風物が、大震災で失われたのを、実に巧みに甦らせていることである。調べたものではない、生活からきた実感が、当時の雰囲気をただよわせるためだろう。なんの志も立てずに生きてきた八十年の人生を、淡たんと、こだわりなく語る著者に明治人の一面を見る
目次
- 生い立ち
- 古着屋のおしいちゃん
- 神の家
- 駿台英和女学校
- 二度目の蠣殻町
- 実践女学校
- 甲津学舎と日本医学校
- 東京女医学校
- 父の結婚
- 実験・診察・そのほか
- くらしのいろいろ
- 明治の風俗
- 久子の君
- 中山彩畝のこと
- 家出.
- 二条丸太町
- 父の破産
- 保護監察
- 河内の春
- 出発まで
- 水野葉舟
- 女子文壇社
- 「うきよ」
- 結婚
- 「処女」
- 四月馬鹿
- 読売入社
- 「ニコニコ」と「団欒」
- 浩一路と友だちについて
- 瓦解
- お帳場日記
- 長女誕生
- 家財蒸発
- 亭々生作「秋の夜話」
- 原稿生活
- 中外商業新報
- 関東大震災
- 震災拾遺
あとがき