2010年7月、思潮社から刊行された谷合吉重の第1詩集。装幀は稲川方人。
目次
- まだ、ここら辺りが海だった寒流時代
- ゆきずりの子は
- 鳥という文字を見つめる
- 物語との緊張のあわいで
- 秋を糺し、冬を問う
- 圧してくるものがある
- 葉の田んぼ道からの帰り
- 若いよしきりが川岸を鳴き急ぎ
- 夢の三角洲に佇み過呼吸を繰り返す
- 養父母を愛すると
- 難波田城址の曲輪に
- 立ち上がる
- さびしいものなど、なにひとつないのに
- 春に震え、夏に怯える
- この村には当然のごとく故郷はなく
- 村議会議員の選挙に
- 隆起する古代古生層からの熱情
- 母を造ろうと
- 時をかけて、やってくる和解
- おまえのひとみは玉虫色にかがやき
- そこに佇んでいるのは誰なのか?
- 冬萌えの朝に
- 姉と歩けばいつもともなううららがなしき感情
- 躊躇いながら朝の地図をひろげる
- 鎌持つ母
- ターチャンは青白く
- 親戚のターチャンが我が家から遠のいた日に
- ひらがなの眠る小学校のプールに虐められ
- 整形外科医によって
- 植物である
- あらぬ方向から聞こえてくる胴間声
- 風に戦ぐ木の葉の向きを見る
- 斜線を引かれ躓きが訪れたら
- 大魔寺山門前の駄菓子屋
- ナガネのガラス戸の前で
- うさぎが猫に目を噛まれ、病んだ野羊が助けを求めている
- 六番目のゆびはかならず親ゆびにはえる
- 夜、橋本歌吉は
- 難波田から三里
- 小さく纏まる
- 終わりなき終焉
- 一系列の植物の歴史
- 茜さす鉄路の下をくぐり
- 夢の中
- 母を鎮めに一日浦和の別所沼まで歩く
- 門衛は君を指差しそのひとを奥さんですと唱えろという
- 光の奥にある
- 小学校の七夕飾り
- ユッカ蘭が咲く夕闇時
- 鳥影の輝きに魅せられながら
- 伊佐島橋から東大久保へ