残影の記 三輪正道

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 2011年11月、編集工房ノアから刊行された三輪正道(1955~2018)の第4著作集。装幀は粟津謙太郎。

 

 どうにか、第四創作集をまとめることができた。前著『酒中記』から六年が経ち、ぽくも今秋で五十六になる。昨春、神戸在住二十年にして会社の借上げ宿舎を出て、近間ではあったが自家に引越しをした。来春まで持ちこたえれば、わが宮仕え三十五年となるが…。もともと三年周期くらいの転勤族のはずだったが、思わぬことに二十年を越えて神戸に居住した。神戸の気候・風土が、ぼくに適したということでもあろうか。
 上林暁は、生前の第二十八創作集のすべてに、「あとがき」を書いていて、それも丁寧な自作の解説を主にした一文になっている。『明月記』(昭和十八年五月発行)の後記には、こうある。《…これでまた、ぼくの作品に「記」の字のつく作品が一つ殖えたわけだが、考えてみれば、ぼくの作品は、小説といふよりも、なんだか「記」というものに当るやうな気持がせぬではないのだ。…》。拙著も、『酒中記」につづき、『残影の記』となり、上林暁のひそみにならった感もある。
 Ⅰの「「『きたぐに』まで」と「佐和山にて」は、わが哀歓の故地、湖東・彦根と故郷・越前の地に思いを馳せて連作を意識して書いた。「すべては『夜がらすの記」から」は、故川崎彰彦さん追悼の一文として、あらためて川崎さんとの出会いから振りかえってみた。
 Ⅱの諸編は、二年の湖国への単身赴任を経た関西暮らしの回顧モノともいえようか、三十年のわがジグザグとした…。
 Ⅲは、前著に引きつづき、「大和通信」に連載したわが現在の暮らしの便りとでも。
 「残影」は、文字通りであるが、〈おもかげ〉にも通じる。今回も編集工房ノア社主の涸沢純平さんに題名の示唆、作品の選択に貴重な助言をいただき有難うございました。粟津謙太郎さんには前三著にもまして、栄えある装幀をしていただきお礼申し上げます。
(「あとがき」より)

 
目次

  • 湖国暮らし・断章
  • 綿向山の眺め
  • 阪急沿線にて
  • 故地再訪
  • 篠本線料金所にて
  • 泥酔の記憶
  • 車窓と途中下車の妙味
  • 「歌のわかれ」あとさき
  • 「萩のもんかきや」と洲本

あとがき

 

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