詩論 小野十三郎

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 1949年8月、不二書房から刊行された小野十三郎(1903~1996)の詩論。装幀は高橋綿吉。1947年刊行の真善美社版に加筆訂正を行ったもの。

 

一、これらの諸斷片の大方は戰爭中、雑誌「文化組織」に連載され
たものである。
一、一本とするにあたつてわざと元の無整理無秩序の姿のまゝで放り出すことにした。一体系をめがけることは私の目的とするところではない。短歌的抒情に對する詩人としての抵抗をぶちまけたまでだ。より科學的な批判の仕事をよぶ誘いの水である。
一、これは又私の讀書ノートのようなものであるから自然內外の詩人、作家、批評家、科學者たちの言葉がたくさん引例されている。譯文の出所をあきらかにすべきだが煩雑を避けるため特別の箇所を除き書名及び譯者名は省略させてもらつた。
一、この本が成つたのは畏友花田清輝のすすめによるところが多
い。記して感謝の意を表する。
一九四七年二月 小野十三郎 

 

決定版に附して
本書の再版は、昨年末に出るべくして、紙型造嵌まで完了していた。それがやむを得ない事情で延々になつていたのを、私よりも、長年の詩友である大西鵜之介、藤村吉一の兩君がしびれをきらし、最初の出版社と圓滿な話し合いの上、今度同君らによつて出發した不二書房の第一回刊行本として、装を新たに上梓されるはこびになつた。私は友誼に感奮し、舊版の誤字誤植を正すと共に、二三重要なる補足を加え、これをもつて「詩論」決定版とすることにした。初版の場合といい、又、この決定版といい、詩人と詩人の全き理解と支持によって世におくられるこのような本は、世界廣しと雖る他にあまり無いだろう。初版にも増して、多數の讀者によまれ、新しい詩を創造するための幾多の課題がここからひきだされることを希ってやまない。
一九四九年七月一日
小野十三郎 

 


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