バリケード・一九六六年二月 福島泰樹歌集

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 1978年12月、改訂版として草風社から刊行された福島泰樹(1943~)の第1歌集。付録栞は松田修「レンライの熱い飛沫に八日夜啼(おら)び哭(な)き悲び歌(しの)ぶ」、龍「胸でちぎれるワイシャツボタン」。刊行時の著者の職業は僧侶。

 

 いま一九七六年一月、樽見よ、あれからちょうど十年の歳月が流れたのだ。いま私が棲んでいる地方では、冬になると連日、季節風が吹きあれる。海からの風は冷めたい。そういえば十年前の冬のキャンパスにも、シベリア寒波のつめたい風が吹き荒れていたっけ。
 樽見、あの日のことを覚えているか。正月、あわてて卒論を書き上げ、慌しく俺達はキャンパスを走りまわっていた。一月二十一日、全学はついにバリケードストに突入したのだ。
 一九六六年二月二十一日、夜半から降りだした雨は、明方には霙にかわっていた。樽見よ、私が最後に君の姿を見たのは、機動隊に包囲された二・二一未明のことであった。サーチライトに浮んだ君の顔を、私は生涯忘れはしないであろう。すでにして長い冬の時代の到来は告げられていた。七〇年では遅い、ロマンの一片すら介在することが許されない時代が始まるのだ、というつよい想いにかられていた。一九六九年十月、友人たちの声に送られて私は、第一歌集『バリケード・一九六六年二月』を急遽刊行する。革命的ロマンチシズムと誰かが言った。路上には火焰瓶が無気味な音をたてて炸裂していた。
 樽見よ、十年を経ていまでも私の中で、なにかが切なく疼く時がある。私達は再び会することはないであろう。さらば還らざる日々よ、そしていまふたたび、君への言問いをしたいと思う。願わくば樽見よ、このつたない腰折れに応えてくれ。
 一九七六年一月 愛鷹山山麓柳沢にて 福島泰樹
(「跋」より) 

 
目次

バリケード・一九六六年二月

  • 一月
  • 二月
  • 三月
  • 四月
  • 五月
  • 六月

・悲劇論 (一九六五年)

  • 悲劇論
  • 現象学
  • 昏睡の樹
  • 流血の刻
  • こぞの秋

・青春論(一九六六年)

  • 学園封鎖
  • その日、花電車が
  • 青春論
  • 乱春
  • よしやひとりの
  • 挫折もしのり越ええなば
  • 戦列の日に
  • 放蕩児
  • 鶴とびさりし

あとがき


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