羽ねつき・手がら・鼓の緒 泉名月

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 1982年1月、深夜叢書社から刊行された泉名月(1933~2008)の随筆集。泉鏡花回想記。装画装幀は鹿俣茂輔。著者は泉鏡花の姪。

 

 子どもの頃、耳をすまして聞きました。
 鏡花のお母さんの話、鏡太郎のお話、羽つきや手がらや鼓の緒のこと、鳥の眼のこと。
 鏡花の妻のすずが話す、話の調べを思い浮かべながら、鏡花の家に傳わっておりますお話を、聞いた通りに、書きましたのが、「羽つき・手がら・鼓の緒」です。
 「羽つき・手がら・鼓の緒」を、「別册現代詩手帖」の昭和四十七年新年號の特集、”泉鏡花”に、初めて載せてくださいましたのは、當時の現代詩手帖の編集長でいられた、桑原茂夫氏でした。
 中井英夫先生が「羽つき・手がら・鼓の緒」を、お氣に入りくださったと、編集長の桑原茂夫氏から、うれしい言葉をいただいた時には、明るい夢の花をみたような思いがいたしました。
 中井英夫先生を、よくご存じでいられる、深夜叢書社の、齋藤愼爾氏も、「羽つき・手がら・鼓の緒」をおよみくださいまして、逗子の家へ、たずねてみえました。
 鹿俣茂輔先生に、繪と装幀をおねがいして、深夜叢書社から出版をしてくださるというのです。
 その時から、繪を本を、本當に見ることができる日を、待ち遠にすごしておりました。
 鹿俣茂輔先生が、ここに、お描きくださいました「羽つき・手がら・鼓の緒」の、鏡花鏡太郎の家のお話のさし繪、頁を開いて、一圖、一圖、見れば見るほど、たのしい想いがめぐります。一描一描、一筆一筆に、じっと見入ると、なつかしい思いにみちてきます。
 扉の題字、見返し、奥附も、鹿俣茂輔先生の御筆がいただけました。先生は、さし繪のこと、装幀のこと、深くお心にかけられて、二度、三度、逗子の家へおこしくださいました。「鏡花のおかあさんがはかれた、炭火の入ったあたたかい、ひきだしのついたぽっくり」のこと、「泉鏡花集」のこと、くわしくおたずでいられました。鏡花の兎をおめにかけた時には、およろこびでした。
 「羽つき・手がら・鼓の緒」の本の表紙繪にたまわりました、あいらしい兎の繪の伊東忠太博士は、特に鹿俣家と深交があり、鹿俣茂輔先生の叔父上が土岐哀果先生や杉村楚人冠氏らと出版されたものと承ります。
 先生のおことばの中の、「うたちゃん」は、「鬼ゆり」(昭和五十年、學藝書林發行)という題の本に、編まれておりまして、兎がでてまいります。
 「鏡花の星」は、、「本の本」の”特集・星のロマン”(昭和五十一年一月號)に載りました。
(「あとがき」より) 

 


目次

  • 羽つき・手がら・鼓の緒
  • 雷・犬・ばい菌
  • マヤ夫人樣・兎の玩具・あつ燗
  • 鏡花の星

あとがき


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