龍詩集 1991

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 1991年12月、龍詩社から刊行されたアンソロジー。装幀は武田肇
 

 『龍詩集一九九一年』をお手もとにお届けすることができることを喜んでいます。通巻第十七冊めになりましょうか。
 この集からは新たに金敷善由、星隆雄、諸隈道範の三氏を迎えた。金敷氏は以前に一年ほど「龍」に籍をおいたことのある詩人。諸隈氏は昨年度韓国ソウルで開かれた世界詩人大会で終始行動を共にした詩人で「地球」の同人を兼ねているが、熱心な希望により同人に決した有望な詩人。星氏は全くの新人であるが、すでに確実な自己の文体を持ち、鮮烈な論理的詩的美を追求している注目すべきすぐれた詩人である。三氏ともいずれも実力十分なすぐれた詩人、今後の活躍にご期待願いたい。
 今年度は同人一同、研究に創作に目立たない地味な活動を続けて来たが、後半になって石下典子さんが詩集『花の裸身』を龍詩社から出版した。繊細な感覚と迫力ある文体とでユニークな世界を創り出していて注目される。
 次いで佐久間隆史氏が土曜美術社より『日本現代詩文庫』』を上梓した。詩作品、評論共に彼の力量を思わせるに充分である。また久方ぶりに鈴木正和氏が、第十詩集になる『Y村寒明けまでの数日』を同じく龍詩社から上梓した。鈴木氏はかねてから独自の確固とした散文体を創り出し、民俗的な主題を追求し続けて来たが、これはその成果を一本にまとめたものである。これらも合わせてご高覧願いたい。さらに瀬谷耕作氏が土曜美術社から詩集『脱いでいく』を出版した。この中には瀬谷氏の宗教的なあたたかい心根が香り立っている。また瀬谷氏の誠実な姿勢が伺える一冊でもある。
 なお、今集には前集に続いての薄谷耕作氏の叙事詩論の中の「叙事詩の方法」と芳賀章内氏の広い資料を踏まえての現代詩についてのエッセイを掲成することができた。ともに現代詩に多くの示唆を与えるもの、今後の同人たちの真摯な探究に基ずく作品群とともにご高覧、ご高評いただければ幸いである。
(「あとがき」より)

 

 


目次

<詩>

  • 相田謙三 黒百合とキツネ 病気になったキツネ
  • 石下典子 ガラスの壺
  • 石川宏 神がなんだというのだ 墨堤にて 彼岸花
  • 加瀬昭 森へ
  • 金沢星子 晩秋
  • 金敷善由 鱗
  • 木村利行 落葉の賦
  • 幸田和俊 阿片 悪夢
  • 斎藤義央 美しい星人
  • 佐久間隆史 喪失
  • 篠崎勝己 さまよう(再現・記憶・腐敗)
  • 杉山満夫 帰路
  • 鈴木正和 T村いつにない秋の長雨
  • 高島清子 山梔 香具師
  • 長久保鐘多 牛乳瓶 やっと終っちゃった!
  • 野沢善子 萩
  • 藤庸子 お供えもの 夢の背0留守万
  • 星圭之助 テンナンショウ
  • 星隆雄 船/五つの断片
  • 真尾倍弘 彷徨
  • 丸地守 眩暈 啼く
  • 丸山勝久 ことば
  • 三国朱鳥子 横笛の韻(ひびき)によせて 王宮のある街で
  • 村山秀子 靴
  • 森戸克美 夢使い
  • 諸隈道範 回想のペンタトレイン
  • 山田野理夫 集中治療室
  • 大滝清雄 万歳の意味 急所

<エッセイ>

  • 瀬谷耕作 叙事詩の方法『長宗我部信親』(森鷗外)の歴史そのまま
  • 芳賀章内 声の聞こえる詩 声の聞こえない詩

執筆者略歴
あとがき

 

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