ガラスの箱 京陽出美詩集

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 1987年12月、イオブックスから刊行された京陽出美の第6詩集。装本は倉本修。

 

 好きな絵も、詩も、それはどこかで自分に出会っていることで、判るってことは、身につまされるとか、そう、もっと想像よりは自分に近いってことで、確かということも、唯唯、自分に近いというだけのこと。詩を書くということは、詩を書く時点で、やはり、いかに自分に近ずくかということで、作品とは、その時の自分にどれほど迫っているかということ。それが空しかろうと、新しかろうと、古かろうと、何でもなかろうと。
 答を探しつつ行く途の、ひとつの過程にしかすぎない詩を、死衣装を編むごとく書いて行きます。時には、ほころびをつくろいながら……。
(「あとがき」より)

 

 この詩集は、いわば石女譚である。なぜなら、その胎にはもう<物語>の輪郭をもった赤ん坊は孕まれることもないのだから――。陽出美は醒めたひとであり、燃えない女であるといってよい。それにしても、この詩的ヒステリア(語源的にはギリシア語で「空っぽの子宮」)には、なにが孕まれるのか。燃焼(あるいは濃密さ)への望郷が孕まれるのだ。だがしかし、ありきたりな望郷だけでは詩性は成就しないのだ。この望郷が大道商人のようなニセの身ぶりとなったとき、疑似望郷となったとき、はじめて京さんの凄艶な詩が立ちあらわれるといえようか。赤を踊らせよ。
(「疑似のなまめき/角田清文」より)

 

目次

  • まがまがし
  • 性わる
  • 逃げる
  • 季節風
  • 震え
  • けものみち
  • 此処
  • めぐりきし
  • 椅子
  • 部屋たちよ
  • 吹聴
  • 窓わくのなか 
  • 季節 
  • 部屋……Ⅰ
  • 部屋……Ⅱ
  • 風景……Ⅰ
  • 風景……Ⅱ

疑似のなまめき 角田清文
あとがき

 

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