2000年12月、編集工房ノアから刊行された以倉紘平(1940~)の評論集。装幀は森本良成。
もう何年も前に「詩学」に連載した「大阪人」というエッセイを、編集工房ノアの涸沢純平氏が、出版しないかと云ってくれたことがあった。Ⅰ・Ⅱ部は、そのエッセイを中心にした新しい大阪を描く試みである。
その頃の私は、大阪の定時制高校につとめていて、夜学生がその一生を終える大阪という土地柄、都市空間について考えてみたいと思っていた。かまぼこを作り続けて生涯を終えた詩人の清水正一も、敗戦で公職を追われた私の父親も、この土地で亡くなったが、私は私の知っている彼等の生を、蕪村の描く史上もっとも美しい<大坂>という都市の花やぎによって鎮魂したかったのかも知れない。
Ⅲ部は、現代詩人に関するエッセイ。
Ⅳ部は、『平家物語』について書いたものだが、偏見と独断に基づいている。<サーラ>に対するポエジーは、今なお私の関心をそそる。
古典も現代詩もごった煮の感じだが、勤務先の近幾大学文芸学部長だった故後藤明生氏が、新しい文学部のあり方として、研究と創作、古典と現代文学の垣根をとっぱらう<超ジャンル>ということを提唱されていた。この本の構成は、その影響が大であるが、もとよりこれは私の<超ジャンル>に過ぎず、あの世で後藤氏は苦笑されているかも知れない。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
- 嵯峨信之「自己『半年譜』次第」を読む
- 畏るべき詩、畏るべき現役詩人
- 弔辞――嵯峨信之氏に
- ミスター現代詩
- 安西均全詩集
- 美学そして詩法の必要性
- 安西均先生追悼
- 伊藤桂一氏の文学――詩集『連翹の帯』をめぐって
- 井上靖氏の詩業寸感
- ビター・スゥイートな味わい――新川さんの人生感慨詩について
- 杉山平一全詩集」
- 玉置保巳氏の文学――つつまれてあることの喜び
- さようなら、玉置さん
- 玉置さんの文学、ふたたび
Ⅳ
あとがき