1979年10月、創樹社から刊行された菊池敏子の第3詩集。第4回現代詩女流賞候補作品。
三冊目の詩集ができました。自分の詩集をもつことは、喜ばしいことである半面、とても恥かしく、コワイことだと思います。今回も、準備を進めてゆきながら、初めて詩集を出したときと同じように、面映ゆさと気遅れを覚えました。作品の稚拙は承知の上で、自分の作品を自分でまとめるのですから、そう神経質に考えなくてもよさそうなものですが、いざとなると躊躇いが生じて、三冊目の詩集をもつのは、まだ早いのではないかとか、作品の一つ一つを読み返し、もっと違った書きようがあったのではないかなどと考えて、なかなかふんぎりがつかず、出版社に原稿を渡すまでに、いたずらに時間を費してしまいました。『日々のれりいふ』を出してから三年半。わずか三年あまりの間に、そう作品が肥えるものではない、といまは少し開き直り、自分で自分を慰めています。いつになったら颯爽と、詩集を出せるようになるのでしょう。
戴いた詩集を手にするとき、わたしは、どうかこの詩集が肩の凝るようなものではなく、読み易く、好もしいものでありますように、と思いながら読み始めます。そして、それはいま、読んで戴く側に立った私の希いともいえるわけです。
この詩集も、『日々のれりいふ』でお世話になった創樹社にお願いしました。今回も美しい本に仕上げて下さった創樹社の米田順氏のお骨折りに、深く感謝いたします。なお、この詩集のタイトルは、以前、別の名前で雑誌に出した詩作品の題を使用し、今回改めて、この詩集に収録しましたことをひとこと申し添えます。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- わたしは水を
- 水の剝製
- 涸れる鏡
- 扉
- 涙壺
- 貸しゆめ
- 桜(はな)の腕
- 祝電 《ヨウカ》
- めかりどき
- 六月のチアノーゼ
- 淋しい卵
- 重い花
- 髪は
- 風売り
Ⅱ
あとがき