1987年5月、思潮社から刊行された松井啓子の第3詩集。版画は野田哲也、装幀は芦澤泰偉+吉村麻里子。
前詩集『のどを猫でいっぱいにして』を出してから、もう、三年あまり過ぎた。そのあいだに、私は三度すまいを変えている。名古屋市守山区、瀬戸市北松山町、杉並区高円寺、横須賀市若松町。もうじき、また転居する。いつも風は追い風だ。「どこへなりと行け」と吹く。
土地の景色も人びとも、その土地に私が立った時だけあらわれる、と思ってみた。それとは反対に、実は、私自身が仮空の人物なのではないか、と思ってみた。
順風満帆!じゅんぷうまんぱん!勇ましく掛け声を自分自身にかけてきたが、読み返してみると、歯切れの悪さが目立つのはふがいない。行こうとして、私は、来し方をふり返ることになったためか、と思う。
(「あとがき」より)
目次
- 先頭固定レース
- 喫茶<とも>の熊
- 『新諸国物語』
- 霹靂
- 卵ゲーム
- イエスタディ・レディ
- 梅開二度
- 隣の手紙
- 八度七分
- 耳の中
- 矮性の
- 情話
- 朝の仕事
- 日替わりランチ
- お答えします
- 職人気質
- 順風満帆Ⅰ
- 順風満帆Ⅱ
- 順風満帆Ⅲ
- 順風満帆Ⅳ
- 私の声
あとがき