窓 西村和子句集

 1986年2月、牧羊社から刊行された西村和子(1948~)の第2句集。装幀は伊藤鑛治。精鋭句集シリーズ7。第7回俳人協会新人賞作品。著者は横浜生れ。刊行時の住所は横浜市戸塚区。

 

 俳句を作り始めて数年経ち、何でも句になる面白さを覚えた頃、清崎敏郎先生から「旬を作る時は必ず窓をあけて作るんだよ」と言われた。窓が閉まっていても見える物は同じなのにと思いつつ、窓をあけてみた。すると、それまで聞こえなかった鳥の声が、風の音が、遠い町のざわめきが聞こえて来た。土の匂い、草の香りがして来た。雨上りの大気のうるおいも伝わって来た。先生が私に教えて下さろうとした事が、その時少しわかりかけて来た。
 二人の子供の子育てが始まり、思うように句会へも出て行けなくなった時期、岡本眸先生に出した手紙のお返事に、「窓が小さければ小さいほど、ほとばしり出る力は大きいはずです」と書かれてあった。仲間から取り残されたような淋しさの中で、俳句への思いを確かめて暮らす日々も、無駄ではないのだと思えて来た。
 やがて下の子が幼稚園に上がり、時間の余裕が出来た時、同じ年頃の子供を持つ友達と小さな句会を作った。子供達が帰宅するまでには帰っていられるように午前中の集まりとし、「窓の会」と名づけた。こうして、今できることから少しずつ始めて行けば、だんだんに道はひらけて来ると思えて来た。
 第二句集を「窓」と名づけた所以である。
(「あとがき」より)

 


目次

  • 夏の花/昭和五十七年
  • 夏潮/昭和五十八年
  • 鰯雲/昭和五十九年
  • 寒紅/昭和六十年

あとがき


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