1987年9月、夢幻航海の会から刊行された福田葉子(1928~)の第3句集。付録栞は岩片仁次、林桂。著者は東京生まれ、刊行時の住所は世田谷区砧。
本集に収めた一三五句は、昭和五七年七月に上梓した第二句集『複葉機』以後、昭和六一年までの作品の中から、主に「俳句研究」「季刊俳句」「鵞」「夢幻航海」に掲載された句に多少手を加えた。製作年月は不同である。
実は、本集を編纂し書肆麒麟へ本文入稿直後、まったく降って湧いた話から俄かに三十数年ものあいだ住み馴れた代々木上原から世田谷の砧への移転が決まった。
思えば、この代々木上原は、いまは亡き師高柳重信に再会した地でもあり、戦後の一、二年を除けば、私の総ての俳句はこの地で培われ育ったとも云える。幸い、歩いて二、三分の距離に「俳句評論」の発行所があり、よくお邪魔をさせて頂き、発行所には同人諸姉兄のほか、高名な詩人、歌人、俳人が集まって来られ、重信師や苑子夫人との多彩かつ豊富な内容の対話をつぶさに拝聴させて頂いたりもした。そのことは私にとって何よりも貴重な体験になった。上原での思い出は尽きない。計らずも本集は代々木上原への辞別の句集になった。
(「あとがき」より)
目次
- 薨・卒・死
- 亡王朝
- 夭折山系
- 實母散
- 追伸不備
あとがき