一度見たものは 菊池唯子詩集

 1999年10月、花神社から刊行された菊池唯子の第2詩集。著者は盛岡市育ち。刊行時の職業は中学校教員、住所は盛岡市

 

 十月に生まれたせいか、一番好きな季節は、と問われれば「秋」と答える。例年になく暑さが続いた今年は、秋の訪れがひときわうれしい。その季節に、ようやく第二詩集が上梓の運びとなった。
 詩に触れる喜びは、ふと、何かが弾けたように「意味」が飛び込んでくる喜びに似ている。名付ける喜びであり、実る喜びでもある。あるいは、空を流れている音楽に加わる喜びともいえるかもしれない。
 そのようにして、一つ一つ、書いては直し、しているうちに、十年が経っていた。
 その間、多くの方々にお世話になった。詩の形になる前の「思い」を支えてくださった皆さん、跋文をいただいた菊地貞三先生、内川吉男氏を初めとする同人誌「火山弾」の皆さん、また詩誌「山毛棒」の方々、そして花神社の大久保憲一さんに、心よりお礼を言いたい。
 詩を書いて得られることは何だろう、と自問することがある。その答えの一つは、まぎれもなく、「誰かの心に届くこと」である。詩という形になった「思い」は、風に運ばれる種子に似ている。届いて、芽吹くことができるのだ。わたしの中にも、そのようにして育ったいくつかの木々がある。
 今日、その種子を風に乗せようと思う。
 まだ見ぬ土地で、芽吹くことができる日がくることを祈りつつ。
(「あとがき」より)

 


目次

・KITAKAMI

  • 一度見たものは 
  • 夜更けに
  • 満月
  • 秋 
  • ロードレース
  • 生命の樹
  • みずうみ
  • 真昼
  • 砂漠
  • 辛夷
  • 日だまり
  • その道について
  • さくら
  • その木について

・SAWAUCHI

  • 晚秋
  • 峠の道
  • 九月
  • 新年
  • 冬の日記
  • 輝きの中で
  • 三月

・MORIOKA

  • 風に
  • 海に降る雪
  • 黄金の河
  • 歌に寄せて
  • 子供のうた
  • 盛岡
  • 火のために

風土に根ざした詩情こそ 菊地貞三
あとがき

 

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