1979年1月、TBデザイン研究所から刊行された藤富保男(1928~2017)のエッセイ集。装画は北園克衛。
ぼくは詩集『言語の面積』を境にして、その前後まで、詩についての勝手気ままなコメントをいくつか書いてきたが、それらは本にまとめられずに、あちらこちらに散らばってしまった。
この中に入っている詩的メモは、正式には詩論ではない。どちらかというと、詩にまつわる随想である。または詩についての雑記録である。そしてそれらは今までのすべてではないが、今回、山口謙二郎氏と奥成達氏の骨折りによって拾い集められたものである。
自分の日記を何年かして読む思いがして恥ずかしいが、二人に感謝しながらこの雑記文集を出すことにした。
因みに『パンツの神様』という題をつけたのには他意はない。これは、ぼくの第一詩集『コルクの皿』の後半の詩にコルクの墓を
淋しくたたいたりして
パンツの神様
さよなら
とか
云って逃げる
(一部のみ)というスタンザがあって、そこからとった題である。
表紙及び本文中の線画は北園克衛氏によるものである。
(「『パンツの神様』の発刊のことで」より)
目次
- 晩夏
- 俵屋のタベ
- 二枚の切手
- いたずら
- ヘルフゲン氏
- 見えない人
- 魚のことで
- アイサツの挨拶
- 電話の馬鹿
- 詩のなかの mysterious mood
- 私のオバケ
- 時の場合
- 言葉のひときれ
- 説明的な非説明
- 聴衆
- E・E・カミングズ氏についてのメモランダム
- カミングズの手紙
- ナポレオンの事を書いたカミングズにぶつかって
- やっぱりカミングズ
- 黄金のバケツには詩の花粉がいっぱいマザーグースのことで
- 巌窟詩王――エズラ・パウンドについて
- 意識的錯覺
- 西脇順三郎の「二人は歩いた」という詩について
- 不明の光――西脇順三郎に関して
- 英学ことはじめ之古事記
- 薬と笑いたくなる詩
- 北園克衛の詩
- たたく――ダラー・ブランドのこと
- おだやかな蹂躙師――セシル・テーラーにふれて
- 冬の夜は人間の肌が一番暖かい――マッコイ・タイナーのことで
- 音の波紋と言語の破門と――コルトレーンについて
- 鳥もつ縁
- 詩の材料をどこに見つけるか
- 調子のよい喧嘩
- 夜が長いことについての不可知論
- 一本の鉛筆
- 長さ
- 白い羊と黒い羊とではどちらが多く牧草を食べるか
- わがもの顔をしないわがままな寺男
- むかで
- わがままこそが礼儀
- 無限題――短い詩にふれて
『パンツの神様』の発刊のことで