1993年4月、弘栄堂書店から刊行された仁平勝(1949~)の第2句集。装幀は長山真、木版は平野勇。著者は武蔵野市吉祥寺生まれ。
これは『花盗人』につぐ第二句集である。といってもその処女句集から十二年余りの年月が流れている。その間に何冊かの評論集を出してきたが、句集をまとめようという気にはならなかった。そもそも俳句をあまり書かなかったからである。もっぱら評論を書くようになると、だんだん俳句が作れなくなってくる。たぶん頭の中で言葉のモードを切り替えるのに時間がかかり、またそれだけの時間を費やす余裕が失われているのだろう。
なのにまた句集を出す気になったのは、この四月から朝日カルチャーセンターで俳句の講師を引き受けることになり、ふたたび俳句を作らざるをえない環境が生じてきたからだ。ようするに、これから俳句のモードに頭を切り替えていくための刺激剤である。
最初から俳句の師を持たない気楽さで、思いつくままにいろいろな俳句を試みてきた。まずモチーフを考えてから俳句を作り出すというのが、わたしの基本的なパターンである。「俳句研究」「現代俳句」「未定」「豈」等の各誌に発表してきたものを、そのモチーフから十二の章に分け、各章の体裁を整えるために足りない句数は新たに書き下ろした。
(「あとがき」より)
目次
- 東京物語
- 庶民列伝
- 少年のくに
- 家族の肖像
- 家長諷詠
- 田園の憂鬱
- 都会の憂鬱
- POEの樽
- 山彦讃
- 格言集
- たながるた
- 十七字歌
あとがき