1999年5月、現代企画室から刊行された水野るり子(1932~)の第3詩集。
この詩集の[Ⅰ]には、最近のれん作であるちいさないもうとのシリーズを入れ、[Ⅱ]には主として行分けの諸作品を、[Ⅲ]にはすでに他界したもと家族たち、とくに母を巡る作品を収めた。
ちいさないもうとのシリーズは、巻頭に載せた≪丘≫という作品から生まれた。一昨年のある秋の日、毎月出している葉書詩の一篇として、ふいにいもうとのイメージが浮かんできた。ちいさないもうととはだれか…。失った自分自身の分身のようでもあるが、それ以上に、生の深みに見えかくれするこのような存在への憧れである。かって(おんなこども)とひっくるめて名指しされてきたものたちの奥に潜んでいる強いアロマのようなエッセンスでもある。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 丘
- 秋のいもうと
- 紫蘇を摘むいもうと
- 草の匂いを編むいもうと
- 川のほとりのいもうと
- いもうとの木
- ユリノキの下で
- 真夜中のいもうと
Ⅱ
- レタス宇宙
- 飛ぶ木
- 帽子の気配
- とどく声
- 夏の夜、植物の声
- 水底の秋
- その夜
- 冷凍庫の空
- 冬の時間
- 木への時間
- ものたちと
Ⅲ
門へ
秋の忘れもの
ドーラの耳
213号室の夢
しだのはは
春の柩
月の石の記憶
石の時間