2000年3月、私家版として刊行された森口規史(1954~2000)の遺稿詩集。編集は岸上繁と鈴木漠(1936~)。
跋に代えて 鈴木漠
風のように現れ、風のように去って行った一人の詩人への、これは紙碑、言葉を累ねて積んだ墓標である。
徳島新聞の読者投稿欄『徳島詩壇』に、森口規史さんが初めて応募して来たのは一九九九年一月のことだった。それからの一年間に二四篇の作品が寄せられ「無念 鯨 昇天」「百発百中義蔵居士」「時間のいばら」の三篇が入選を果たしている。一方、徳島県環境生活部が主催する『とっくしま県民文芸』への応募作「照葉樹林に抱かれ」は一九九九年度の最優秀作に推挙された。私の知る限り、四十五歳から詩を書き始め四十六歳で没した森口さんの、これが詩作品の全てである。偶々それらの銓衡に関わった私は、森口さんの生い立ちや日常など私生活の一切について知る立場にはなかったがただならぬ詩心の高揚に驚きを喫せずにはいられなかった。突然の消失を余儀なくされた詩の磁場とその光芒は、惜しんでも惜しみきれない。
目次
- 無念 諒 昇天
- 泡沫を鳴らす
- それでいいんよね
- 君よ 二十歳の若い君…
- 私が脳死臓器提供第一号
- 藍におちる
- 郷愁誘う鯨
- 蕾ひらき 花かおり
- 入学の朝
- 君には
- 老人の眼が死ぬ
- 針の蛇と大蛇の神通力
- 紫の瞳の奥
- 須恵器の記噫
- 照葉樹林に抱かれ
- 桂楫
- 百発百中義蔵居士
- 銀の耳飾り
- 遺伝子の悪巧み
- 骸の価値
- 塵になるなら青
- 雨の夜は嫌だね
- 東欧絵本の世界展
- 時間のいばら
- 燦爛を掬い
付記