蛇の花嫁 大手拓次詩画集

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 1940年12月、龍星閣から刊行された大手拓次(1887~1934)の詩画集。編集は逸見享(1895~1944)。

 

繪について――畫集の自序――

あたまの中にもやもやしてゐる幻想を詩であらはすほかに畫でやつてみたくなつた。
畫なんかすこしもかけない私だが、あたまの中の幻想があふれ出して、どうにもかうにもならないので、かきはじめた。子供の自由晝のやうに、私も子供になつてかきはじめる。
之はみんな幻想のスケツチである。

 

「蛇の花嫁」 この不思議な書を偶然世におくることになった驚きと喜びとを是非語らねばならぬ。
 晩秋のある日、やうやく大手拓次小曲集の編纂も濟んだので、發行を引受けてくれた詩と版畫誌「風」時代からの友人澤田君と磯部ど訪ひ、拓次の墓前に報告勞々お參りをした時のことである。宿舍磯部館の三階で、私逹が夕食もすませ、うちくつろいでゐると、故人の甥大手由五郎、櫻井作次の兩君が十餘册の日記と帳面を持參したので皆で調べた。拓次の日記は以前にも見たことのあるものであつたが、尚その中には相當の厚味のある書籍風のスケツチブツクが幾册か混つてゐることを發見した。初見の澤田君が先づそれを手にとつて暫く繙いてゐたが「この詩集はどうしたんですか」といふのである。
 私は思はずそれを手にとつて檢べてみると、これは正しく拓次自身が生前に作つて置いた詩集なのである。しかも、まへがき、序詩まで備つて、一頁に一詩を丹念に清書したものであつた。最後に目次まで附されてゐるといふ入念さに至つては故人にとつてこれ程完全な詩集がないのである。
 これは立派な詩集だ。このまゝで好い。このまゝ印刷にかけやうぢやないかと一決した。そして、それと同時に發見された故人の畫集から若干の繪を採つて、詩畫集としてだすことになつたのである。
(「あとがき/逸見享」より)

 

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