1972年6月、昭森社から刊行された町田志津子の第3詩集。
ここにおさめた詩は、<ざくろ>を除いては、第二詩集(一九六五年)以後の作品で、詩誌「時間」「航程」と二、三の新聞・雑誌に掲載されたものから選んだ。
Ⅰは一般的な題材、Ⅱはわたしの生活、系譜に近いものであるが、ⅠとⅡの間に明確な線を引くことはむつかしい。Ⅲは旅の間に生まれたものである。
この詩集をどういうかたちで出すか、ということでずいぶん迷った。わたしには、深尾須磨子先生、北川冬彦先生御夫妻と「時間」同人の、きびしくあたたかい励ましがあり、「航程」の若い同人のやさしい支えがある。事実作品の大半は「時間」と「航程」に載っている。しかし、詩もしょせん暗闇をひとり手さぐりをするような孤独の道であることを考え、甘えや寄りかかりをやめ昭森社のお世話になり、こういうかたちをとることにした。
わたしは以前、友人の出版記念会に寄せた小文の中に、「作品集をつくるのは、墓をたててやることです。散らばった作品をひとところに集め、安心して眠れる場所を作ってやることです。生身の作者は、そこから別の方に歩いてゆく……」という意味のことを書いた。四一篇の詩が手許を離れていった今、むなしさに似た気持のあいだに座っている。このむなしさの底から、わたしは別の方に歩いてゆくことができるであろうか。そうなれるよう強く願っている。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 風景
- あじさい
- 鏡
- エジプトの壺
- さくら
- 飛天
- 菜種梅雨
- 三島
- めくれた空の下
- 花火
- いのち
- 樹木達
Ⅱ
- 赤いランタン
- 母の海
- ざくろ
- ざれうた
- 断章
- 死者の宴
- からを煎る
Ⅲ
あとがき