1948年9月、北斗書院から刊行された金子光晴の第6詩集。題字・装画は田川憲。
この詩集は、僕の皮膚の一番感じ易い、弱い場所で、例えばわきのしたとか足のうらとか口中の擬皮とかいふところに相當する。だがこの柔さ弱さ、たあいなさがつまり僕なのだ。じぶんの弱い音よりじぶんにとつてたよりになるものはない。そしてこれらの詩は空襲もよほどひどくなつてからのもので蛾は終戦一週間ほど前のものである。全篇に哀傷のやうなものがたゞよふてゐるのは、いつ終るかしれない戦争の狂愚に関する絶望と歎きのよりどころない気持からで、いつはりなく弱々しい心になつてゐた。
(「あとがき」より)
目次
- 蛾
- 蛾I
- 蛾II
- 蛾III
- 蛾IIII
- 蛾V
- 蛾VI
- 蛾VII
- 蛾VIII
- 諷諭
- 湖水
- 薔薇
- しやぼん玉の唄
- 球
- 玉
- 牡丹
- 湖畔吟
- 夜
- 雲烟
- 雨
- 肉體
- 薔薇I
- 薔薇II
- 薔薇III
- 薔薇IIII
- 薔薇V
- 薔薇VI
- 無題
- 三人
- 子供の徵兵檢査の日に
- 冨士
- 戰爭
- 三點
- 床
- コツトさんのでてくる抒情詩
- おもひでの唄
- 五つの湖
- 美女蠻
- 美女蠻
あとがき