1994年7月、青蛾書房から刊行された暮尾淳(1939~2020)の第3詩集。装幀は石川勝。著者は札幌市生まれ、刊行時の住所は中野区新井。
わたしは、どうやら自分の精神の安定のために詩を書いているようだ。酒でもよいのだろうが、最近はひどく疲れてしまう。
ここに収めた二八篇は、一九八九年すなわち昭和天皇の死の前後から今年の四月までのあいだに、『騒』や『核』などに発表した作品ばかりである。今回手を入れたのもあるが、初出一覧をつけるほどのものでもないので省かせてもらった。「雨もよい新名所」だけは前のタイトルを少し変えた。_
四月二六日名古屋空港で中華航空機が墜ちて沢山の人が亡くなった。じつは詩集をまとめる気になったのは、今度タイの南に仲間と出かけるからである。散文ならまあいたし方ないが、もし事故でも起きて、得心の行かない落着きのないままのすがたで、これらの詩篇が、わたしの好きな人たちの前にさらされる場面を想像したわけである。わたしは臆病な男なのである。
ともあれ、他人にはほとんど意味のない秘密のおもちゃ箱を、ええいままよとばら散くような、そんな気持ちでこの詩集を出す次第である。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 異国の町で
- パスポート
- ブロードウェイ
- 過ぎた日々への四行詩
- イテウォン素描
- 雨もよい新名所
- ハイパーク
- ウォーター・タウン
- 五月小景
Ⅱ
- 咳をする犬
- カフェ・ド・ガランスにて
- かたくりの花
- 桜
- 桜 つづき
- 卯酒して
- 庭池草紙
- 霧のバカンス
Ⅲ
あとがき