1964年11月、昭森社から刊行された大江満雄(1906~1911)の第2詩集。装幀は北園克衛。
この詩集は一九四七年の冬、北海道当別のトラピスト修道院を訪ねたときの作品を中心にして編んだ。初期の創作方法とはちがうが、最初にもったものを大切にしようと思っている。ここに収めた作品は、ほとんど二三年間推敲した。類型的なものは収めなかった。「ゆめの中のゆめ」は戦争中に「詩研究」という詩誌に発表した文語で書いた「ゆめ」を口語訳にしたものである。私は現代文語をつくりたいのでいろいろ試みる。戦後私は、こどもの詩を書いたので(それは、じぶんの中にあるこどもを発見するということであるから)一篇代表的な作品を収めた。私は距離感を示すと同時に「血の花が開くとき」前にもったものをよみがえらせ、キリスト教的なものとマルクス主義的なものの統一を考えた。表現は自由でないということをしだいに感じる。この詩集は十四年目に出た詩集。森谷均さんに感謝。
(「あとがき」より)
目次
- ゆめの中のゆめ
- 風の道
- 敗戦の日
- ある戦死者のための墓碑銘
- 自戒の二行詩 三篇
- 春のブドウ園
- あけぼのの翼をかりて
- 雪の夜
- あの人たちの日本語を杖にも柱にもするな
- ゆめの中でわたしは思つた
- 日本語
- 狭い部屋に住み
- ツガル海峽で
- 火
- ガリラヤのあなたに
- わたしは狭い小さな宇宙だ
- 目に見えないコスモスの花について
- 夕暮れ
- チミップ
- 船
- わたしは海を飛んでゆく鳥だ
- 一つの世界を
- 貧しい言葉
- 石油ランプの燈街
- 雨
- 花
- 古い機械部屋
- かえることのない一回的な言葉
- 告別
- 海の歌
- 原子力について
- わたしは復活を信じないのに
- 歌の中の歌
- 崩壊
- エオン
- マツリカ
- 熱的な死がよみがえるとき
- 言葉の原子破壊的な作業
- 受胎告知
- あのとき
あとがき