1983年11月、津軽書房から刊行された山田尚(1935~)の第3詩集。著者は青森県南津軽郡大鰐町生まれ、刊行時の職業は弘前私立小学校教諭、住所は弘前市広野。
詩集『リュリュの岸辺』(昭和48年2月)を、亜土叢書Ⅲとして出してから、早いもので十年の歳月が過ぎた。この辺でまた詩集を上梓することには、かなりのためらいもあり抵抗もあるが、あえて世に問うことにした。
詩集『冬の輪』は、ぼくにとっては第三詩集にあたるが、ぼく自身の内なる混沌とした声に耳を傾け、この機会に、それにひとつの形象を与えようと試みたものである。ぼくの詩の主題は、「死」とかかわったものが多く、どうしても暗く、重くなりがちだが、それはそれでよいと思う。しかし、無明の闇の底に透徹した眼を持ち得たかとなるときわめて疑問である。
また、逆説的にいえば、この十年間を含めて、ぼくがいかに無為に安易な日日を生きてきたか、ということにもなるのであろうか。
ともあれ、詩集『冬の輪』は、Ⅰに同人誌『心象』に発表したものをまとめ、Ⅱには、『リュリュの岸辺』以降の『亜土』に発表したものを収録した。ⅠとⅡは年代が逆になっている。Ⅲには未収録作品を集めた。稚拙な習作の域を出ないものが多く、完成度からはほど遠いが、それなりに愛着がありここに収めた。
詩集『冬の輪』を刊行するについては、今年八十歳の誕生日を迎えられた高木恭造先生をはじめとする『心象』『亜土』同人各位の励ましとご支援に支えられて実現したことを付記して、感謝の意を表したい。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- ひとつの歌
- レクィエム
- 土曜の夜と日曜の朝と
- 遠い存在
- 驟雨
- 水の変奏
- ことばの海へ
- 憂鬱な日々の歌に
- 白の幻視
- 冬の輪
- 春のエチュード
- トマト色の夕陽
- 別れのとき
Ⅱ
- 朝明けを待ちながら
- めも
- 夜の終わり
- 伝説
- 冬の歌
- 水の夢幻
- 回転体のα
- 挽歌
- ゆめはどこへ
- ぼくの存在からは遠い
- 永遠という字
Ⅲ
- 秋・バラード
- 卵
- UFO
- 仮面による五章
- ぼくはとてつもなく病んでいる
- ひとつの予告
- 夏の終わり
- 戦士のための悲歌
- 戦争
- 八月のためのレクィエム
あとがき