1989年1月、東京出版から刊行された千葉吉弘(1945~)の第3詩集。現代詩叢書4。
ここに収めた詩は、詩集『しずかな小路』(兄晃弘との共著)『象の国』以降のここ十年以内のものである。
「人生は短かく芸術は長い」という言葉がある。確かに人生は短かい、僕も四十路を越えた。人生の短かさと時の速さをひしひしと感じる。生活が単調なためかなおさらそう思う。春が過ぎて夏が来る、秋が来て冬になる。この季節の周りを福井という地域で生活し感受する。
僕が詩を書き始めたのが高校在学中からである。京都の大学にいた兄から詩集を渡されて読んでいるうち、触発されて何気なしにノートに詩を書き始めて以来書き読けている。その間中断の時期も少しはあった。
詩は僕にとって杖のようなものだ。それをなくしては歩きにくい。それを使えば歩くのが容易になり楽になる。僕のような人間にとってはなくてはならぬものである。
詩を書く動機は人様々であろうが、生活において詩を書かざるを得ない人の作品は好きである。
時を考えて、言葉を並べ組み立て言葉を選ぶ個性的な比喩など、僕の場合はそういう作品は殆どない。これで詩といえるかどうか恥じいるばかりである。しかし、詩集を出す以上そんなことは言っていられない。『現代詩集成』詩誌『青魚』などの活字として発表した作品を中心として、後はノート六、七冊の中から選んだ。
題名を『コップの中の水』とした。水辺に生命は集まる。小さな孤独な生命も、河や海とのかかわりの中で生活を営む。めだたない虫や草も生命を宿している。生命を育む自然によって生かされ、自然の中で生きている。自然を無視することは生命の無視につながらないだろうか。生命を育む自然を忘れたくない。
永久ともいえる歴史の中で、一瞬にすぎない人間の一生、この限りある時に僕に何ができるだろうか。ささやかな詩集を敬愛する先生や友人、有な読者に捧げます。
目次
- 笹舟
- 不思議
- うり
- ひとさし指
- やぶれたたいこ
- 迷い鳥
- いつか通ったあの道
- ぼうこい
- し
- 春の日
- 秋の羽
- 父の足
- 曲がった腰
- 顔
- 矢を射る
- 海のほとり
- まり
- 朝
- 外景
- 月夜の道
- 西山展望台
- 幼児と猫
- 父の頭
- コップの中の水
- 実と花
- 景色
- リヤカー
- おにやんま
- 少年とトランペット
- 雑草
- こころ
- 時
- 観世音菩薩
- 夏の山
- 白赤黒
- 夕暮れ
- 彼岸花
- 橋
- ハレー彗星
- 自省録
- 影
- 海(一)
- 海(二)
- 海の声
- 冬の海
- 花見
- バラの花
- 子供
- 土
- 鳥
- 嵐山
- こうのとり
- 樹木
- 三国の花火
あとがき
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