詩選集 樹木と果実 第一集

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 1956年8月、五味書店から刊行されたアンソロジー

 

 この詩集は「樹木と果実」を舞台として活動している若い詩人の共同詩集である。
 「詩のサークル運動が盛んになつてきたある時期に、詩は誰にでも書けるといつた人があつた。わたしはある意味ではその説を肯定すると共に、また手放しでは肯定できない。というのは、詩をたんに感想の平板な羅列と考えるならば、おそらく誰にでも書けるであろうが、ほんとうの詩は感想の終つたところから始まるのである。つまり一つの感想や思考を詩の言葉に結晶し、その言葉が人間のこころとこころとをいちばん深いところで結合させるような機能を果たさねばならない。
 ここに集まつた詩人たちはまだ若く、それ故に技術的にはまだ未熟であるかも知れぬが、今日、われわれをとりまいている暗い日本のもろもろの現実にたいして抵抗を感んじ、その詩精神を如何に芸術的に結晶させようかという意欲をもつている。その意欲を推進力として、それの資質と方法とによつて持続的に詩の仕事にたずさわるならば、そこらからそれぞれの美しい花々が咲くであろう。文学・芸術には、ある意味で完成というものはなく、刻々の持続の中に仕事の苦しみと喜びとがあるのである。そういう意味で、わたしはこれらの若い詩人たちの苦しみと喜びにみちた前途に多くの期待をかけている
(「序/壷井繁治」より) 

 
目次

序文 壷井繁治

  • 青木繁 宣言・扉・潜水艦・夜のなかをゆく・不毛地帯・招待
  • 片羽登呂平 入党した少女Ⅰ・入党した少女Ⅱ
  • 末次正寬 埋立地風景・玄・悲歌・ヨーコの絵・終日・出発
  • 菊地道雄 あるプロテスト一・あるプロテスト二・人間機械・メカニツクマン・弱虫の男・ブランコのうた・雄鶏のうた・沼・邑
  • 立岡宏夫 路地・夜行列車のうた・靴下によせるうた・しては後悔・有明村・カナンの国を
  • 鹿島竜夫 現場・花畑・君ら・停年満期・風景Ⅰ・風景Ⅱ
  • 賀川幸夫 無題・誰かがいつた・町に在つた・夕暮れの雲の中で
  • 窪田亨 会いたい・鬼ごつこ・煙・海・石段をのぼる・千歳橋附近·悲情をつきぬける・落日
  • 前田武房 歯車・機関車に乗つて・水車・雑音・うなぎ・かしら・登山
  • 荒岡憲正 ぶらんこ・夜をつらぬく歌・野良犬・岩・枇杷の花・三月某日・下駄加工場の呼吸・お父さんに
  • いなだ・みのる 百姓の娘・田植え頃・山仕事・作男のうた・平和
  • 川村章二 僕は・教科書・瞳・祖国の春に・指令・ニッポン牛
  • 加畑滿雄 夕景色・新聞・夜と昼・木枯よ私に・乙女のような主婦・成長のための歌・五月のおみなに
  • 工藤照代 露よ・今日の頁には・赤い蝶々・洗髪から・桜貝みたい・私の仕事
  • 辻五郎 約束・雪が……・げんまん,原爆の子・紙碑
  • 原修 スパナの歌・ハンマーの歌・放射能雨・地搗き人夫の歌・愛のうた

後記


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