1970年6月、大和書房から刊行された小海永二(1931~2015)の現代詩入門書。
この本はもと、三一書房の「高校生新書」の一冊として、書きおろしたものである。その時の題名は『現代の詩―新しい詩への招待』(昭和四十年刊)となっていたが、今回、大和書房から再刊されることになったのを機会に、部分的な修正を加えた上で、題名も『現代詩入門―戦後詩への招待』と改めることにした。
『現代の詩』は、高校生新書の一冊という性格上、高校生を読者対象とするものではあったが、その際わたしの気持ちとしては、高校生と限らず、一般の若い人々にも読んでもらえるような書き方をしたつもりだった。一つには、それまで戦後詩の概観をした手頃な入門書が一冊もなかったので、それをこの本で試みようとしたからである。幸い、高校生以外の読者も多く、戦後詩の入門書としては、今もまだ他に類書がないので、わたしとしては、この本の役割はまだ終わっておらず、その存在意義もまだ当分はあろうかと考えて、大和書房編集部のすすめに従い、読者対象を限定しない形で再刊することにしたわけである。ある意味では、この本はこれでその本来の姿にかえることができたとも言える。
五年前にくらべれば、戦後詩の読者は着実にみえてきてはいるが、この本によってさらに戦後と詩の魅力を知る読者がひとりでもふえてくれることを、わたしは期待している。
(「あとがき」より)
目次
序章 戦後詩の世界
- ほんとうに難しいのか
第一章 戦後詩の歴史
- 焼土の中から 『民主主義詩運動、他
- 戦後詩の成立 『荒地』
- 政治と芸術の前衛 『列島』
- 戦後世代の登場 『櫂』『今日』
- オリジナリティーの主張 個性的な詩人群
- 自我のダイナミックな運動 新世代の台頭
第二章 戦後詩の主題
- 共通の時代認識 戦争体験
- 批評性の確立 時代性
- 屈折した感情表現 愛の思想
- 存在の追究 生と死の認識
- 外界との内的な交感 自然の形而上学
第三章 戦後詩の方法
- 表現領域の拡大 メタフォア(暗喩)
- 観念の意図的暗示 アレゴリー(寓意)
- 想像的世界 ヴィジョン
- 内的なレアリスム 自動記述
- 現実状況の投映 ドキュメンタリー(記録)
- 視覚的効果 映画的詩法
- 現代文明批判 原始への志向
- 純粋性の造型 詩的神話
- 詩的ジャンルの可能性 詩劇
- ことばの戯画化 ユーモアとイロニー
- 内面性の質的変化 リリシズム(抒情性)
- 体験的な実感 生活者意識
終章 戦後詩の発見
- 主体的な読み方とは何か
あとがき