1987年12月、野火の会から刊行された谷本邦子(1935~)の第1詩集。装幀は高田敏子、挿画は渡まゆ。野火叢書164。著者は三重県伊賀市生まれ、刊行時の職業は上野市立小学校教諭、住所は上野市。
谷本邦子さんは、三重県上野市で小学校の先生をしていられます。ふくよかで、さっぱりと頼りになる感じの谷本さん、子供達にさぞかし楽われていられることでしょう。
私が選者となっている「母の日」によせて毎年募集する「お母さん」の時に、ある年、次の詩がありました。「ぼくはがっこうで/たにもとせんせいのことを、ときどき/おかあさんといってしまいます/はずかしいなあ/でもたにもとせんせいは/がっこうのおかあさんだから/まあいいとおもいます/うちのおかあさんは/わかくてやさしいです/がっこうのおかあさんは/ちからもちでやさしいです」
一年生のこの詩、かわいい詩とだけ思って入選上位にしたのですが、選が終ってもう一度読み返したとき、これは「谷本邦子先生」と気づきました。当時谷本さんが勤務されていたのは上野市立古山小学校。毎年入選作のあることもわかり、山の自然に囲まれた木造校舎をお訪ねする機会も持ちました。
谷本さんは、子供達に詩を書かせる時間、ご自分もまた書かれているように思います。子供と一緒に、周囲の自然に目をとどかせたりして。暗さがなく明るくたのしい詩が多いのもそのためでしょう。また、科学者や、心理学者のような、分析もして、ちょっと皮肉な詩も生まれています。
もう一歩、突っ込んでほしい作品もありますけれど、それはこれからの楽しみということでしょう。
第一詩集『植物期間』のご出版を心からお祝いいたします。おめでとう。生徒さん達もどんなにかよろこばれることでしょう。そして、第二、第三時集と、生まれてゆきますことを期待しています。
(「はじめに/高田敏子」より)
目次
序・高田敏子
1
- 夕方
- つばき1
- つばき2
- 夕餉
- 春の夜
- 夏
- たぬき
- 山百合
- 鳥
- 忘れる
- 信号
- 存在
- えり足
- 変容
2
- かかし1
- かかし2
- かかし3
- ロの字
- 両替
- 処分
- 人間
- とり
3
- バス
- つくし
- 道
- 階段
- 体育
- 逆立ち
- つみき
- 成長
- 距離
- 同僚
あとがき