1981年5月、野火の会から刊行された小西たか子(1937~)の第1詩集。装幀は高田敏子、装画は前田和佳子。野火叢書89。著者は姫路市生まれ、刊行時の住所は姫路市。
小西たか子さんは、「野火」に入られて十余年になられ、作品や休みなく書きつづけて来られました。
それは「熱心に書きつづけて来られた」というのとも少し違って、それ以上の、小西さんの心のよりどころ、『詩にすがる心』とでもいうものではないかと、私には思われるのです。
何がそのような心を小西さんに持たせたか、まで、立入ることは出来ないのですが、関西での会合の度にお会いする小西さんの、私を見つめる目に、私は小西さんにとっての詩の大切さ、つきつめた心を感じるのです。
小西さんは、地味な方、言葉少なの方なのですが、口ごもりながら私を見っめて、二言、三言いわれることばの中に、「どうしたらもっと、詩の中に自分をこめることが出来るのか」と、早くその方法を知りたいもどかしさをこめていられるのでした。
それに対して私は十分なお答えも出来なかったのですが、野仏を主題に書くことを思いつかれたことから、その道は開かれて、小西さんの心の位置も鮮やかに描き出されるようになりました。
「石仏」からはじまる十篇の連作、その一篇一篇を読み進むことで、母への思慕、生の確認、小西さんの、さびしさ、優しさ、誠実さを見ることが出来ます。
そして、-白い森』の章に納められた「八号室」「母の逝った日」「ひとり詣で」とつづく作品で、石仏に結ばれた小西さんの心が一層にわかるのです。
小西さんとの今日までのおつき合いを思い、『野のまわり』としてまとめられた、心細やかな見事な作品の一篇一篇を、私はうれしい思いで拝見しました。|
(「序/高田敏子」より)
目次
序 高田敏子
・野のまわり
- 石仏
- 雨つぶ
- おぽこ地蔵
- 彼岸花
- 雪の日
- 雪の晴れ間
- 風花
- 雪がとけて
- たんぽぽ
- 野のまわり
・白い萩
- 八号室
- 母の逝った日
- ひとり詣で
- 糸繰り唄
- 白い秋
- 萩の寺はどこでしょうか
- 人形
- 水たまり
- 夜更けて
- 鏡
- 小鳥
- 白いハンカチ
- つくばい
- つぼ
- 市役所
- 生まれる
あとがき