1981年10月、輴の会から刊行された飯岡亨(1931~)の第5詩集。表紙は飯岡美絵、カットは滝沢保二。著者は東池袋生れ、前田鐵之助門下。刊行時の住所は豊島区南大塚。
本年(一九八一年)九月五日で私は満五十才である。五十才という年齢は私にとって怖ろしいとしである。今から三十一年前の九月七日、私の父は満五十才を一ヶ月前にして死んだ。当時私は結核を患い明日をも知れなかった。
妹も末だ中学生、今では那須で安泰に暮している姉の身も定まらなかった。落魄の中で父はこの世に心を残して逝ったであろう。
不幸な生れと生い立ちの中で、父は努力家であったし、頭脳、身体共に衆に秀れていたようであったが、心の何処かに穴のような傷を持ち続けたのであろう。劇的な生涯であった。そうした父を、私はいつしか反面教師として見続けていることを知った。人と人との間、組織と個人の有り様にどうしようもなく傷つけられていく自分の姿の中に父を見つめつづけた。
詩集「真鶴にて」の中に「父の年齢へ」という詩がある。私は父の年齢を乗り超えられるだろうか。
(「あとがき」より)
目次
- 食べ物の文化圏
- でれすけ
- 札
- 一の太刀
- サッパ釣り
- 遺品
- フラノのズボン
- 町
- 市電幻想
- 六道Ⅰ
- Ⅱ
- ルンビニの園
あとがき
追記