わが山川草木 岡田哲也詩集

f:id:bookface:20220314110545j:plain

 2009年10月、書肆山田から刊行された岡田哲也(1947~)の第7詩集。装幀は亜令。著者は鹿児島県出水市生まれ、14人兄弟の末っ子。

 

 今から四十年以上も前のことだ。
 新宿のさるロック喫茶でライブを聴き、トイレに立った時、隣に来たロカビリアンが、用を足しながら私に言った。「ロックだよなあ オイ ロックしてるかい」
 私はぎくっとした。なんて気障(きざ)なことを言うんだ、だから俺は、この手の人間が苦手なんだよ―ー。私はウウと生返事をして、目皿のナフタリンめがけて、だらしなく放尿していた。
 しかし、私だって初めての詩集の後記にこう書いている。「詩を書くことは私には天職である。むろん、職業にもなりえぬし、職人にもなりたくないが……」
 よく言うよ、この思いあがりめが、お前さんだって厠上だけでなく、仕事の合い間や枕の上で、「詩だよなあ オイ 詩してるか」などとほざいているじゃないか、というところだ。そして私は、今に至るまで、詩から最も遠い所でこう呟きながら生きてきた。
 火傷をした子は火を恐がる、と言う。
 私の若い頃の火傷は、四十年してようやく治りかけた気がする。傷の痛みや呪縛が消えるのではなく、眺めながら楽しめるようになったというところだ。
 晩生(おくて)で、臆病だったな、とつくづく思う。さあ、これからである。しかし、わざと芯を外して物事を捕えたり、中心から外れて生きることが沁みついた私のことだ。決意や自鞭も、あてにはならない。
(「後記」より)

 

目次

Ⅰ身辺のこと

  • 灰の世直り記――火男のうた
  • 薩摩食べ物考 刺身醤油 
  • スミレとこどもとオオカミは 
  • 本人確認
  • 肥薩おれんじ鉄道 
  • 日曜日の娘たち
  • ブリキの空 
  • 猫と食べる緑の夢
  • しっことしっぽ 
  • 花冷えのころ

Ⅱ心辺のひと

  • 宇治金時
  • 雪明りのおやすみ
  • 高空の朝
  • 雪目でうたう北の旅――常呂から仁頃へ
  • 角 つのの身 
  • 角 つのの芽 
  • 五月のうた――網掛川のほとりで
  • ある日のうた
  • 絶滅危惧種 
  • むすめよ
  • 銭湯にて 
  • 給日記 
  • 春の歌

 

後記

 

 

NDLで検索
Amazonで検索
日本の古本屋で検索
ヤフオクで検索