1962年4月、三人の会から刊行された青柳希世子、浅見圭子、寺尾知江子の合同詩集。
五時に行きますから、と電話がかかってきたら、きちんと五時に二人がやってきた。もう一人は群馬に行ってしまったので東京には手がとどかない。詩にもでてくる「ポンブラン」という店で三人の原稿を読んだ。なじみの深い詩がいっぱいあった。
この三人は、すでに四、五年ぐらい詩を書いているのではなかろうか。最初のころのグループの人たちは別れ別れになり、結局三人だけがのこった。このことは何でもないようでいて、たいへんなことだと思う。詩の神さまは、詩の好きな人たちのために、テーマと力をあたえてくださるようだ。そして彼女たちは、笑ったり、くやしがったり、孤独になったりしながら、それでもいつもペンだけは離さず、詩のなかのもう一人の自分とつれだって今日まできたのである。
ぼくは三人の詩を読みながら、幸福のそばの不幸、やさしさのかげにある意地悪さとでもいうような、つまり二つの相反するものが同時に住む、あのいいようもない詩の世界にさわやかにふれることができたのである。ぼくは平凡な身のまわりのことから、自分の好きなところだけひょいととって、まったくふしぎな詩のできごとにつくりあげてしまうとの三人を、あきれるようにして見直すのだが、彼女たちはなにごともなく、その一人は詩が書けない書けないといい、一人は膝小僧の上にだって書けちまうといい、一人はそういう二人を笑いながら黙って見まもっているのである。ぼくはこの三人のグループを美しいと思う。すでにながい間詩を書いてきたとの人たちは、もうその心のように詩と離れがたいものを持っている。「アンソロジー」ができあがったとき、だれよりも喜ぶのはその作者たちだろうが、詩壇というようなところから、一寸はずれた場所で地道な努力をつづけてきた三人に、ほんとうのお祝いをのべるのは、力をこめたその作品たちだとぼくは思う。
(「わが友三人/菅原克己」より)
目次
- 踏切 青柳希世子
- 昨日のつずき 浅見圭子
- 羊と豚と…… 寺尾知江子
わが友三人 菅原克己