1962年11月、思潮社から刊行された井川博年(1940~)の第1詩集。表紙は著者肖像。著者は福岡市生まれ、刊行時の住所は新宿区上落合。
一年も前から、ぼくは詩集を出すと友人たちにふれてまわっていた。だからいざまとめるとなると、くたびれてしまった。集中の作品はすべて一九六〇年の春から、六二年の春に至る二年間に、大阪と東京で七つの職業に就きながら書いたもので、配列はほぼ制作順である。大部分の作品が、現実の貧しさと、ぼく自身の貧しさとによって生れたものであることを、ぼくは別に弁解したくない。ただぼくは、これらの詩篇を書いた時のぼくの哀れな状況を思い、胸がいっぱいである。
これらの詩篇を書いたということだけで、多くの友人たちがぼくに示してくれた好意、わけても国井克彦、丸山辰美、井原紀雄には経済的にもずい分助けていただいた。ぼくはお礼をする何物も持っていないので、これらの詩篇をそのお礼にしたい。思潮社の小田久郎氏には、これから書きますからよろしく、という他はないだろう。
(「あとがき」より)
目次
- 見捨てたもの
- ぼくの生れ
- 発見
- 渋谷・北谷町
- 来てはいけなかったひとのように
- きみに!
- 母に
- 言葉
- 形見の歌
- 停車場で
- 美しい人
- 並木の雨
あとがき