雲の生まれるところ 今泉忠芳詩集

 1967年12月、思潮社から刊行された今泉忠芳(1934~)の長篇詩集。著者は愛知県生まれ。

 

 ザックをかついで出かける様なときには、一冊のスケッチブックザックの中に入れてゆくことにしている。その用途は雑記メモで、スケッチも時にはあるが、主として行程記録や所要金額などで、それらの間に雑文や「詩のようなもの」が書きつけられている。時には宿の割箸の袋がはりついていたりする。白い紙のままのことも多い。
 ひとりで山道などを歩いている時は、休まずにせっせと歩いてしまって疲れすぎることが多い。その予防にスケッチや「詩のようなもの」で休みの時間を長くとるようにするためでもある。そのスケッチブックの古い順から「詩のようなもの」を集めてみたのがこの本である。
 「詩のようなもの」を書く時は、概ねひとりで、疲れて、背の荷物を放り出したという状態であるため、発想が類似しているし、また、その様な状態は精神的にPhysiologicalであるよりもむしろPathologicalで、それが「詩の様なもの」の内容を大いに甘くしていると思われる。しかしよりPhysiologicalであるためには、時にはPathologicalであることが許されてもよい様に思う。
 「山は黙っている」から「どこまで行ってもほんとの空はない」まで、十年位にわたっている。そして相変らず「山は黙っている」し「どこまで行ってもほんとの空はない」様である。自分の日常の仕事の方向をふりかえってみると、「ほんとの空」を仕事を通じて求めようとしていたのかも知れないのである。
 たえず過去のProductがおおうべくもない貧しさを示すという経験は「この詩のようなもの」にも該当するのであるが、この際思い切って一つの形にしてみようと思う。
 本を作るにあたって、いろいろお世話を頂いた思潮社の小田久郎さんに御礼を申し上げます。
(あとがき」より)

 


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