1993年10月、新潮社から刊行された清水哲男のエッセイ集。挿画は小島武。
この本は、世間によくある詩の入門書でもなければ鑑賞の手引きでもない。
私がこの本で言いたかったのは、いまどきの詩(現代詩)はとても面白いということ、「ね、ウソじゃないでしょ」ということ、これに尽きる。
だから私はこの本を、華麗で繊細な数々の詩のショー・ウィンドウをのぞきこむような気分で、楽しみながら書いた。あっちへふらりこちらへぶらりと、掲載した詩には直接関係のないことも、失礼ながらたくさん書いてしまった。読者にも、そんなリラックスした気持ちで読んでもらえれば嬉しい。その上で、現代詩がどんどん好きになってもらえれば、もっと嬉しい。(「あとがき」より)
目次
- 見ててごらん 見てた?――「水はつめたい」辻征夫
- 涙流させにだけくる人――「あけがたにくる人よ」永瀬清子
- 「男」にとっては、コワい詩――「男について」滝口雅子
- 「当たり前」という感覚――田中冬二
- 正確な食事の思想――「私の前にある鍋とお釜と燃える火と」石垣りん
- 日本人のプライド――「日雇手帳」川崎洋
- ”かわいそうなひと”と”正義”――「やせた心」中桐雅夫
- 生き残る側でのみつくられる”死後の世界”――「死後の世界」黒田三郎
- 自由からはほど遠くなった”自由詩”――「SITUATION NORMAL」平田俊子
- 満員電車で思い出したい詩――「夕焼け」吉野弘
- 誰でも普通のおじいちゃんになる――「森の若葉 序詩」金子光晴
- 女に困った時の男に贈る応援歌――「女の自尊心にこうして勝つ」――関根宏
- ビールの最後の一雫――「無常の雫」筧槙二
- 藤村富美男が天を翔けた日――「王貞治が6番を打つ日」長谷川龍生
- 暑い詩もある、涼しい詩もある――「茶の間」阿部恭久
- 遠花火としての詩――「難破船」会田千衣子
- 心いぶせき日は――「心いぶせき日は」森道之輔
- 素直な言葉を求めて――「茄子の郷愁」岡田隆彦
- たまには狂いなさい――「怒りの構造」北村太郎
- エコロジーへの不信――「雪の降る日」以倉紘平
- どこで止めるか 詩の四隅について――「二段蹴ばしの黒人」辻本佳史
- 極詩的素敵コロッケ――「肉屋の前に坐る」鈴木志郎康
- 夜は若く彼も若かった――「雪は汚れていた」田村隆一
- かっこよくやらないとね――「routine 10」秋山基夫
- 若い女たちに――「帰り道」天野忠
- 学校嫌い――「朝礼」井坂洋子
- 彼の無造作――「五月の詩」寺山修司
- 猫好きと猫嫌い――「猫に代って」諏訪優「真昼の決闘」藤富保男
- おお、二中――「消息」村野四郎「燃えるモーツァルトの手を」吉増剛造
- のもうよ のみましょ さかほがい――「時の劣化を防ぐ」江森國友
あとがき