1964年12月、思潮社から刊行された吉原幸子(1932~2002)の第2詩集。
このひとりぼっちの相聞歌を、誰でもなく、誰であってもよい〈あなた〉に捧げる。さうして別れを告げる。
半年前に刊行した「幼年連祷」のノートにも書いたやうに、これは私が突然覚悟をきめて、一種の焦りと諦めの場所で総目録をつくった、そのほぼ後半部にあたる。
私のつもりでは、前のものがpièces blanches(白い本)、こんどのがpièces noires(黒い本)として、ひとつのものを構成する筈であった。そのために、本のつくりも、黒と白を写真のネガティヴのやうにすっかり逆にする、といふひそかな趣向を考へてゐた。
しかし、内容は果してどうなったか、私には分からない。全然、裏返されてゐないかもしれないし、ネガティヴが強すぎて”ひとつのもの”になってゐないかもしれない。
とにかく、やっと少しせいせいした。次に”精算”したくなるめんだうをなるべく遠ざけるために、勘定書(ビル)が又たまらないやうに気をつけて、しばらく惰眠をむさぼりたいと思ふ。(「NOTE」より)
目次
ひとつの夏
Ⅰ
- 放火
- 馬に
- 月に
- 嫉む
- 瞬間
- 散歩 一
- 散歩 二
- 風景
- 人形
- 石
- 宣告
Ⅱ
- 天邪鬼
- しみ
- 喫茶店で
- 霧
- 横断
- 夢
- 樹に
- 夜
- ふと
- 対話
Ⅲ
- 奇妙な死体
- 車窓
- 港の宿で
- 海辺で
- 断つ
- 短い航海
- 食欲
- パンの話
- ガラス拭きのうた
- 挽歌
- 帰宅
- 吼える
Ⅳ
- カーテン
- ユリシーズ
- 呪
- 待つ 一
- 待つ 二
- 雨
- 啖呵
- 鬼に
- 点火
- 行方不明
- 破棄
むかしの夏
Ⅰ
- 冒瀆
- 晩夏
- 1 別れ
- 2 貧血
- 3 午後
- 4 食事
- 5 忘語
- 6 くちづけ
- 7 又別れ
- 欠乏
- 出発
- 街
- 驟雨
Ⅱ
- 名まへ
- 去るものに
- 或る宴
- HELP!
- 殺意
- 逝く春に
- これから
- 開花
- てがみ
- 断片
- 遺書
- 黒い夜に
NOTE
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