2020年10月、みすず書房から刊行された荒川洋治(1949~)のエッセイ選集。著者は福井県三国町生まれ、刊行時の職業は愛知淑徳大学教授。2019から日本藝術院会員。
今年の二月、みすず書房編集部の尾方邦雄さんから、エッセイ選集の企画の話をいただいた。仮題は「文学は実学である」となっていた。「文学は実学である」は、二〇〇二年九月の文芸時評の前半の文章である。普段の見方を記したものなので、本書の表題とした。
一九九二年から二〇二〇年まで、二八年間に発表した文章から、旧い時期のものを中心に八六編を選び、時間に沿って、全四章に分けた。それがこの本である。エッセイは、虚構ではない。事実を大切にする。自由きままに書くことはできない。でもわずかな余地がある。そこに楽しさと夢がひろがるのだ、と思う。これからもエッセイと過ごしたい。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 白い夜
- 春の声
- 慈愛の顔
- 友だちの声
- 小さな銀
- 夜のある町で
- 風のたより
- 横光利一の村
- 仕合わせのタマゴ
- 晩秋
- 大きな小事典
- おかのうえの波
- 夢のクーポン券
- 声
- 漱石の自己批評
- 一人
- 目にいれるよろこび
- 沈黙の恋
- 陽気な文章
- 心のなかの広場
- 編集者への「依頼状」
Ⅱ
- 会わないこと
- いつまでも「いい詩集」
- 思想と眺望
- ポロポロの人
- たしか
- 会っていた
- 道
- 畑のことば
- 芥川龍之介の外出
- 秩父
- 忘れられる過去
- コーヒーか干柿
- クリームドーナツ
- すきまのある家
- 歴史の文章
- メール
- 文学は実学である
- 場所の歳月
- 鮮やかな家
- 話しながら
- 今日の一冊
- 途中
Ⅲ
- 秋
- ぼくのめがね
- 軽井沢
- 青年の眠り
- いま動いた
- 静かな人の夜
- 水曜日の戦い
- ソラの丘
- 白い戦場
- 「銀の道」を行く
- 釘
- ブラックバード
- 百円の名作
- ハナミズキ
- 畳の上の恋
- おくれる涙
- 行間はない
- これから
- 短編のあらすじ
- 最後の文章
Ⅳ
- ここにあるもの
- 二人
- 黙読の山
- 美しい砂
- 第三の書評
- チチチ
- 蛙のことば
- 散文
- 葛西善蔵と人びと
- 国際交流の流行
- 南方通信
- 読書
- 春とカバン
- 駅から歩く
- 一枚
- 近代の記憶
- ことばの道しるべ
- 詩歌の全景
- 春の月
- 見るという舞台
- 加藤典洋さんの文章
- 柔らかな空間
- 紅い花
あとがき
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