2015年11月、七月堂から刊行された西原大輔(1967~)の第6詩集。
『詩物語(しものがたり)』という書名は、平安時代の歌物語(うたものがたり)から発想しました。「伊勢物語』『大和物語』『平中物語』では、和歌と短い文章が一体となっています。実在した人物について語られることも多く、一種の伝記のような性格を持ちます。短歌に詞(ことば)が加わり、韻文と散文が融合した抒情的作品。『詩物語』は、そのような詩文交響の世界を意識しつつ作ったものです。歌物語では、定型三十一文字が鍵ですが、本書では、主として自由律詩が中心となっています。
通常、詩集に掲載されるのは、詩作品だけです。私はそのような本を手にしつつ、詩人自身による解説が添えられていたら、と思うことがしばしばあります。詩とエッセイを並べた『詩物語』では、詩が文を引き立たせ、文が詩を補うものとなるよう心がけました。
私は、七五調四行詩を七五小曲と名づけ、専らこの定型形式で詩を書いています。しかし、『詩物語』には、七五小曲は一篇も収録していません。定型を愛してやまないとはいえ、詩情が七五小曲の型にうまく収まらない時もあります。この詩集では、七五小曲という四角い小箱からはみ出した詩篇の数々、四十五作をまとめました。二〇〇九(平成二十一)年から二〇一五(平成二十七)年までに成ったものです。
(「はじめに」より)
目次
I 少(わか)き日を懐(おも)う
Ⅱ 生きるしみじみ
- 祝婚歌(原点)
- 年賀状
- 結婚披露宴
- 病棟の窓
- 方法
- 自分の血を見つめて
- 友を見舞って
- 昔の人もみな
- 横死者を悼(いた)む
- 人生問答
Ⅲ 心に風景を刻む
Ⅳ 詩を書くこと
- 夢破れた芸術家への讃歌
- 売れない演歌歌手のように
- 月の文学
- ホームレス詩人
- カンナの花
- 幸せな詩人
- 薔薇悲歌
- 諷刺詩を作る
- 平等万歳
Ⅴ 二行の詩情
- ポケット
- 存在
- 広告
- 時計台
- 丘に立つ
- 花弁
- 砂浜の詩集