1975年9月、東京美術から刊行された藤浦洸(1898~1979)の詩集。編集は薩摩忠、装画は松尾隆司、イラストは佐藤しげお。
詩集を出して置きたいとは今までに度々思った。友人たちも熱心にそれを勧めてくれたし、出版社からも要請されていた。
ところが、いざその気になって、編集してみると、あちこち気にいらぬところが出て来た。「これも止めよう」「これも削除しよう」そんなことをやっていると、すっかり痩せ細ってしまって、体裁にならなくなった。そしてそのままになってしまうのである。
ある詩友は「みんなそうだよ、自分で編集しては駄目だよ。若い友人にやってもらいなさい」といった。
それではいけないなと思ったが、またそれでも仕方ないなと思った。
そこで若い友人の薩摩忠君に頼んだ。薩摩君は快よく引受けて下さって、私の全部の旧作を整理し編集して下さった。
今年私は七十七回目の誕生日を迎えることになった。詩を書いて暮したのであるから、一度しみじみと振り返ってみてもいいと思う。そして、わがままな私に長くつきあって下さった多くの友だちに感謝のしるしにお贈りしたいとも思う。
長い間の作品を並べて削って、まとめたものであるから雑然たるものがある。いろんな年代を経たものであるから止むを得ないだろう。.
私はひとえに易しい言葉で優しい心を書くことを願って来たのである。これがその詩集である。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ 海の中の故郷
- 海の中の故郷
- ふるさとの海
- 常灯の鼻
- 瀬戸
- 番岳にて
- 海風
- コシヨロを想う
- 歳月
- 追憶
- 少年
- ま夏の感触
- 私の海
- 老水夫の詩
- 旅人
- 航跡
Ⅱ 私の四季
- 朝
- クロツカス
- 春風のたより
- 糸杉
- 私の四季
- 朝の海
- 初夏
- その道
- 微風
- 杖
- 裏山にて
- 十月
- 落葉
- 風景
- 影
- LaBonneChanson
- ここにくると
- 木枯し
あとがき
著者略歴